捧げ物

□痛みすら悦びとなる貴方の腕(かいな)で私を縛って・・・。
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いつも通りの日常。
いつも通り事務所へ行き、
いつも通り魔人と謎を解き、
いつも通り帰宅する、はずだった。

近くで女性の悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向いた先、私の目に飛び込んできたもの。
確認する間もなく駈け出していた。

「アカネちゃん!!」
金色の長い髪が宙を踊る。













「で、その結果がソレか。」
「う・・・・。」
時を遡ること昨日の帰り道。
近くで女性の悲鳴が聞こえ、振り向いた先に飛び込んできた光景は幼い少女が車に轢かれそうになっている瞬間だった。
それを目撃した途端、足が動いていた。

「アカネちゃん!!」
3年前にも同じようにして子供を庇ったことをふと思い出す。

なんとかすべりこんで子供を抱え、寸前で衝突からは逃れた。
が、直後凄まじい痛みが腕にはしる。
「・・・・・っ!!」
「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
見れば金髪の中から大きな目で此方を見上げる少女の顔が見えた。
「うん。大丈夫だよ。けがはないかな?」
「うん!」

その後すぐに母親の女性が駆け付け何度もお礼を言われ、そのまま帰宅した途端に蘇る痛み。
あまりの痛さに玄関にずるずるとへたり込む。

「い・・・・た・・・。」
すでに涙声になっている。
まさか、というかかなりの確率で確信があったが病院で検査を受ければ案の定「骨折」という診断が下された。

不幸中の幸いだったのは折れたのが利き腕じゃなかったこと。

がっちり固定され、腕をつって帰る始末となった。
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