novel

□曇天の彼方
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久し振りに屋上にでてみる。最近は忙しくてここに来る暇もなかった。空は今にも泣きだしそうな曇天だ。そういえばお父さんが死んだ日もひどい雨だった。
「ヤコ。」
優しく私の名を呼んでくれたあの人はもう居ない。家ではいつも一緒に隣で話をして笑いあったあの日々はもう戻っては来ない…。
「ヤコ。」
はっとして振り向くとやや不機嫌そうな顔をした魔人がいつの間にか立っていた。
「雨も降ってきたというのに、貴様はここで何をしている。」
「ネウロ…」
そして足音もなく近づきその細く長い指を私の目元によせる。
「それとも、雨が降っている中で泣けば我が輩に気付かれないと思ったか…?」
「え…?」
そこで初めて私は自分が涙を流している事に気付いた。その瞬間私はネウロに強く抱きしめられていた。
「ネウロっ?は…離し「忘れろとは言わん。忘れる事は進化をも忘れることだ。しかしそれに囚われていたら前には進めぬ。」
あぁこの男はたまに人間よりも人間を理解する。
「囚われるな、ヤコ。囚われず、貴様の進化の糧にするのだ。貴様が感じた喜び、悲しみ、怒り、全てが貴様の進化の材料だ。」
「うん…。」
「分かったな?」
「うん…。」
「全くこんなに体を冷やしおって…。」
「ご…ごめ…
謝罪を口にする前にネウロに口を塞がれる。 優しい口付け。
そうしていると、あれだけ曇っていた空から一筋の光がさす。
「晴れてきた…。」
まるで私の心に呼応するかのように空に光が指す。
「さて、そろそろ戻るぞ。」
「うん!」
この思いは決して忘れる事は出来ないけど今は置いていこう。
あの曇天の彼方へ…。End
→反省会は次のページです。
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