過去へのトビラ。

□訪問者
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みなさん、こんにちわ。ルイです。

「過去変え屋」を僕等が始めて早一年です。イムが言うには、今の所、過去変え率100%だそうです。僕には何を言っているのやらさっぱりです。
今日は「ミノウエバナシ」というのをしろと(管理人さんに)言われたので、「ミノウエバナシ」をします。

僕がイムとリョウの出会ったのは小学校一年生の時です。六歳か七歳くらいかな。僕はその時孤児院にいました。孤児院には赤ちゃんの時からお世話になってました。

孤児院といっても、お父さんお母さんが出張や「タンシンフニン」などで家に一人ぼっちになってしまう小さい子達を預かる寝泊りできる保育園です。

僕はその中で唯一の孤児でした。その孤児院の先生によると、僕は孤児院の前に捨てられていたそうです。差していない赤い傘を持った女の人が、僕を孤児院に設置してあるベンチの上に広げた傘を一緒においていってしまったそうです。先生が追いかけても女の人は居ませんでした。

孤児だなんだと言われても、ぜーんぜん寂しくありませんでした。先生は優しいし、友達も沢山居るし、孤児院の近くにはその友達が住んでいるお家もたっくさんあったからです。

友達がお父さんお母さんの「タンシンフニン」が終わると、自分の家に帰ってしまいます。そんな時、お父さんとお母さんに手を繋いでもらって帰る子達を見て、僕は不思議に思います。先生に聞いてみました。

『お父さんお母さんって、何なの?』

先生は笑って、

「お父さんっていうのは、子供を守ってくれる人。お母さんっていうのは、子供に優しくしてくれる人。分かる?」

僕はまた首を傾げます。

『子供に優しくするのがお母さんなら、僕のお母さんは何なの?』

先生は黙って少し考えます。そして、閃いた様に顔を上げます。

「君のお父さんとお母さんは僕だから、君のお母さんはこんな人だよ。」

先生は自分を指差して笑います。僕は意味が分からなくて首を傾げます。

みんな自分の家に帰ってしまうと、僕は一人ぼっちです。でも昼間は近所の友達が遊びに来てくれるので、寂しくありません。でも夜になるとまた帰ってしまいます。そのときはちょっと寂しいです。





こんっちわ♪リョウでっす。
えっとー。過去変え屋の話はルイから聞いたと思うから飛ばすし。じゃぁ俺の身の上話。

俺が最初に会ったのはイムで、その次ルイ。ルイとは別の孤児院にいたけど、案外楽しかったぜ?フツーに遊んでフツーに喋ってフツーに寝てフツーに食って。

まぁ俺は元々孤児だった訳じゃぁなく、親も居たんだけど、俺が五歳か六歳ン時に離婚して、半年もたたないうちに俺を引き取った母親の方が薬を大量に飲んで自殺。父親も行方不明だし、親戚も居ないしで孤児院入ったんだけど。

まぁ俺以外にも孤児いたし?先生はちっと怖いおばちゃんだけだったしみてーな感じでめっちゃ楽しかった。でもなぁ…運動会の時俺ちっと本気出したら?いつの間にか周りの子が居なくてさ。自分ひとりだけゴールテープ切って突っ立ってんの。

周りの子まだヨーイドンでスタート地点から出ますかーって時に俺だけ。

その事でちょっと気味悪がられちゃってさ。普通じゃない普通じゃないとか、挙句の果てに化け物とか言われちゃって。ちょっとヤバいなって事で先生が他の孤児院に移してくれたんよ。

で、次の孤児院では割と力のセーブもできてきたし友達もできてきたしで大喜び。でも、なんか一人だけずーっと一人ぼっちで居る子がいてさ。そいつが何故かミョーに気になって。

なんか目がこの世の終わりっつーの?人形っつーの?ホント感情の無い目してんだよ。そーゆーの見ると心配にならねぇ?だからさ、ボールでちょっと遊ぼうかと思って、声かけに行こうとしたらさ。友達に止められて。

「あいつ、言っても返事しねーから。つまんねーよ?」

って言われたんだ。そんで、その日の夕方。アイツの姿か教室に見えないんで、フラッと探しに行ったんだ。建物ン中全部探していなかったから、外探してみたら、バッチリ、建物の裏に居た。

そんで、ちょっとキャッチボールくらいできっかなとか思って、俺の顔ぐらいのボール持って近づいてみたんだ。そしたらソイツ、泣いてた。声も出さずに。

『なーにメソメソメソメソしてんだよ?』

声かけたらそいつがビクッて俺の方向いた。黒い髪で蒼い眼して眼鏡かけて右の髪の毛んトコに一本だけピン留めてる女みたいな奴。カッターシャツ着て黒い吊り半ズボン。ハイソックス穿いて黒いピカピカの靴履いて、どっかのお坊ちゃんみてーだった。

『名前は?』

俺が屈んで訊くと、ちっせぇ体を更に縮めて怖がった。

『名前ぐらい良いだろぉ?』

俺と正反対で病的なまでに真っ白な肌を更に青白く見えるような勢いで怖がるそいつ。

『分かった!お前が話したくなるまで俺は此処に居る!』

俺はそいつの隣に座り込んだ。ビクっとするそいつ。でも逃げたりしなかった。





今日は。イムです。

今日は身の上話をテーマに管理人が書いたそうで。

まぁ聞き流しても構いませんが。

俺が始めに出会ったのはリョウ。で次にルイ。俺が孤児院に入ったのが六歳くらいで、馴染めずに孤児院を転々として。まぁあの時はちょっとね。

俺の親は、母親は家で日がな一日家事と育児とガーデニング。父親は一流企業の結構高いトコ就いてて、不自由ない明るく楽しい家庭って近所でも評判だった。俺には弟も居て、ちっちゃくて可愛い年頃だったし、幼稚園から帰ってきたら真っ先に遊んでたくらい。

でも俺がある日普通に幼稚園のバスから降りて、普通に家に帰ったんだよ。
        セイ
『ただいまぁー!森ー!!セイー!!』

確かあの時俺は、弟の名前を呼んでた。リビングに入った時、何かとんでもないものを見てしまった気がする。

気が付いたら、俺は孤児院に居た。今までの事がすっかり忘れてて、何で自分は見知らぬ子供達と一緒に居るんだろうとか思った。

でも何故かとてつもなく悲しい事があった事は覚えてる。何だったかは覚えてないけど。わかんないけど、自然と泣きたくなってた。

いつもの様に誰にも見えない場所で一人で泣いてると、男の子がきて。手にはボール。俺に寄ってくる奴なんて殆ど居なかったから、ビックリしたけど。

『なーにメソメソメソメソしてんだよ?』

黒い髪に赤い目、キャラクターの描かれたオレンジのTシャツに灰色のブカブカの短パン。靴下が短くて靴も見るからに男の子っぽい子だった。

『名前は?』

この孤児院に来て先生にしか聞かれたことがなかったそれを、その子は言った。まぁビクついて言わなかったけど。

『名前ぐらいいいだろぉ?』

その子は俺の目の前で屈む。咄嗟に身を縮める俺を見て、男の子は不機嫌そうになって、、閃いた様に俺の隣に座った。何で座るんだよっ!とか心の中で叫んだなぁ。

『分かった!お前が話したくなるまで俺は此処に居る!』

驚きはしたけれど、何か安心して、そのまま隣で男の子が器用に足でボールを蹴り上げたりキャッチしたりするのを見てた。

『お前、いつも一人だよな。』

俺の方に向かってボールを蹴り続けながらその子は言った。肯定するように頷く。

『お前、友達居ないのか?』

肯定。

『親も?』

多分…孤児院に居るんだから。肯定。あれ?でも何時親が居なくなったっけ?まぁどっちでもいいか。今となっては。

『俺も居ねぇな。』

その子の顔が一瞬曇った。

『ま、孤児なんてそんなもんだろ。いつまーでもクヨクヨクヨクヨしてたって、遊べねーしつまんねーだけ。』

…頷く。

『と、言うわけで、俺達はもう友達だ。』

頷…え?

『よし。これから先生に怒られるまでキャッチボールをしよう。』

え、ちょっとまって、今の流れで?あれ?そうだっけ?そう言うのが友達?
慌てふためきながらもボールを持って立ち上がる男の子を視線で追う。

『お前、名前は?』
    イム カガイム
『…僕は林。加賀林。』

その男の子が俺の手を引いて走っていく。


ピンポーン。

玄関のインターホンが鳴る。

『客かな?』

イムは畳んでいた洗濯物を一度置き、玄関に走っていった。今日は土曜日で、ルイは昼寝をしているし、リョウは日課の三十キロマラソンに出ている。

『はーい。』

イムが玄関をそっと開けてる。すると、黒い背広を着た男が、隣にカッターシャツと黒いロングスカートを着た少女と共に其処に立っていた。

「すみません。リョウは居ますか?」

『あ、リョウの知り合いの方ですか。今少し出かけておりまして。あと少ししたら戻ると思いますが…。』

「貴方にも用があるんです。イム君。」

『?何で俺の名前を…?』

『おーい!!イムぅー!』

イムが警戒心を抱くと、能天気な声が聞こえてきた。…リョウだ。アパートの駐車場から叫んでいる。下を見るまでも無く、リョウはアパートの螺旋階段を駆け上がる。ランニングと、学校のジャージのズボン。ランニング用の靴に白い汗拭きタオルを首にかけたリョウ。

男を見るなり、リョウは走ってきた足に急ブレーキをかけた。一気に青ざめると、男を指差して言った。

『何でテメーが…此処に居るんだよ…親父!!!

「久しぶりだね、リョウ。」

あまりにも突飛な展開に、イムは唖然とした。
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