過去へのトビラ。

□声の
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私立竜宝中学校、掲示板前。

『お。シーズンズのライブ、明後日だと。』

『ほんとぉだーぁ!』

リョウとルイが立ち止まり、掲示板に貼ってあったポスターを眺める。

『おーい、授業遅れるぞー。』

イムに呼ばれ、たたたっと小走りする二人。

『なぁ、イムはシーズンズ見に行くか?てゆーか行こうぜ?』

『久々のライブだな。』

『そーだねぇー。』

『しーずんず、とは?』

チヅルが首を傾げる。そういえばチヅルは転校生だった、と今思い出した三人。
 シーズンズ
『春夏秋冬。軽音楽部だよ。ボーカルのハル、ベースのナツ、ギターのフユ、ドラムのアキ。二組。』

『ほう。そんなに人気なのか?』

『うん。入学式終わって一ヵ月経った頃に出来たんだけど、かなりの本格派で。店頭でCD売ってるよ。』

『…マジか。』

『うん。』














軽音楽部、部室。コードが散乱している部屋だ。

「やっぱフユの選曲は神だな。アタシこの歌マジで好きんなった。」

「俺もー俺もー。」

(それほどでも、と頭をかく。)

「家でガンガン流してたらさぁー、パール(犬)に煩いって噛まれてー。」

「パールが?まぁ、大人しい子だと思ってたのに。」

ギターを弾き流しながら雑談をし続ける。

「…合わせねーの?」

「あ、忘れてた!合わせるぞー!」

「ハルちゃんはドジだねぇ…。」

「本番は明後日!頑張るぞー!!」

「「おー!!」」

(拳を高らかに挙げる)

部室棟の一番奥の部屋。そこが軽音楽部の部室となっている。現在、部員は四名。

四人の特徴は、思い思いの場所にお揃いのヘアゴムをつけている事。
校内でも人気のバンドで、町内の祭りなどにもよく参加する。

「てゆーかハル。合わせんぞって言ってから十分も雑談してねぇ?」
        アキガワモミジ
ドラム、アキこと秋川紅葉(♀)。

「ドジっ子だねぇ、ハルちゃんは。そういう所好きだよ。」
        セキバシナツキ
ベース、ナツこと赤橋夏来(♀)。

(黙々とギターの準備)
         アサヤフユキ
ギター、フユこと浅野冬貴(♂)。

「雑談はいいから、早く始めるよー。」
            シュンギクソウタ
ボーカル&部長、ハルこと春菊奏歌(♀)

「一番雑談してたくせに。」

「何か?」

「いえいえべっつにー。」

仲睦まじい、部員全員がお友達、の四人。


歌い終わり。

「お疲れー。おろ?フユもう帰んの?」

(こくりと頷く。)

「ん、じゃ、気をつけてな。」

手を振るハルに手を振り返すフユ。

「ホントに今日フユ帰んの早ぇな?何があんだ?」

「と、いうか。前々から思っていたんだけど、フユ君、どうして歌わないのかしら?」

「日常生活でもジェスチャーだけじゃん?」

「以前フユ君は雑誌にも載るほど有名なボーカリストだった筈…以前の雑誌を拝見したし…。」

「ん?じゃーなんで?」

キュキュと楽器を磨きながら喋り続ける二人の間にハルが入り込む。

「アイツにはアイツなりの事情があるの。さ、片付け一番遅かった奴、帰りドーナツ奢りだからな〜。」

「嘘だろー!!!」
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