過去へのトビラ。
□暗い少女
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呆然と立ち尽くす茜に、少年が腕を引っ張る。
『そこでは寒いでしょう。どうぞ中へ。』
茜は手を引かれ、中に入った。中は、普通の家のようだった。灰色のひび割れたタイルの狭い玄関には無造作に置かれた靴が三足。段差があり、そこは茶色い板の短い廊下が続く。左には下駄箱、右には何もない。壁は白いが、煤がついている。廊下を二散歩進むとドアがあり、名前が貼ってある。そのドアの隣にもドアがあり、向かいにもドアがある。
『ほらっ!片付けろよ、瑠衣っ!お客様に迷惑だろっ!!』
『はぁーい。』
奥はリビングのようで、テレビが一台、ソファが二つ向かい合って鎮座し、ソファの間にガラスでできた机がおいてあった。床にはカーペット。
『どうぞ、汚い所ですけど。掛けてください。』
茜はソファに座らされ、連れてきた男の子はさらにリビングの奥に向かった。
『お餅たべるぅー?』
「え…いえ、結構です…。」
茜は部屋を見回した。特に特徴のない部屋。テレビとソファと机だけ。
「(ここが…本当に過去変え屋?)」
茜が不思議がっていると、さっきの男の子が戻ってきた。コーヒーの入った容器と、カップを四つ、そして砂糖入れを持ってきて、テーブルに置いた。
『瑠衣!稜!座れ!お客さんの前だぞ!』
男の子が呼ぶと、二人の男の子が今している事をやめ、ソファに座った。
『ご紹介が遅れました。僕は加賀 林。イムとお呼びください。』
真ん中の男の子―イムが挨拶をする。
リョウ ルイ
『こっちが稜、こっちが瑠衣です。』
右に座った男の子、リョウと左の子、ルイを紹介するイム。
「あの…先に確認しておきたいんですけど…。」
『ええ、何か?』
「ほ、本当に、過去は変わるんですか?見たところ、貴方達中学一年生くらいじゃないですか、本当に…。」
『ええ。依頼金一万円でなんでも過去を変えます。たとえどんな事でも。お客様を騙したりなんかしませんよ。僕等にしかできない商売ですから。』
「じゃ、じゃぁ…私の過去を、聞いてくれますか…?」
『ええ、何時間でも付き合いますよ。あ、お砂糖どのぐらい入れます?』