間違いだらけの
〜古文読解〜
皆さん、ご無沙汰しております。
忘れられておりませんよね?
知的なジェントルマン・佐々木です。
あぁ、趣味は意外や意外、フィッシング――で釣れた魚を見ることです。(誰も聞いてない)
今日は何やら静かなようで恐ろしく思っているんですが……如何なさったのでしょう?
古文読解――古典をやるらしいと小耳に挟んだのですが。
少し(いや、かなり)覗いてみましょうか。
いわゆるノゾキですので、良い子は真似しないようにっ。
あぁ、あなたは同罪ですよ?
さてさて参りましょうか。
「――で、だ。文法を現代語訳に直せと言われたところで俺もお前も高3の秋。今更細かいことやってもしょうがねえし時間も無え。手っ取り早く有名どころの物語をさらう」
「えー何で内容さらうの? 光GENJI物語くらい知ってるよ!」
「誰が源氏物語だけと言った! しかも何だその馬鹿丸出しの覚え方は! 一体どんな話にするつもりだテメェ!!」
「ロリコンによるロリコンの為の参考書でしょ?」
「もはや内容すら別物じゃねえか…ッ!」
あ、あれれー?
珍しく静かにお勉強してらっしゃるなーと思いきや、前言撤回ですよ。
また最初から突っ走ってますよ、お二方。
どうしてこう、本題に入るまでが長いのでしょうか。
それを見越しつつ、途中から覗いたつもりなのですが…。
「ったく、お前相手だと何でこう疲れんだろうな?」
「それは私がおバカちゃんだからでしょ?」
「………………」
うわぁ、華さん質が悪すぎですよ!
さすがの冬獅郎くんも黙ってしまわれて。
これじゃいつまで経っても下校出来ませんよ?
「――とりあえず、説明すっから静かに聴け。『静か』にな」
「うん! お口はロックだね!」
「チャックだ。文法の問題はな、有名な物語から出されることが多い。一つ一つの文法を覚えるのに時間をかけるより、内容をさらっておいた方がいい。読解にも役立つかもしれんしな」
「ふむふむ。さーすが日番谷!」
「じゃあまず、定番の源氏物語からいくぞ」
「アイアイサー!」
「源氏物語は平安時代中期に成立した小説で、作者は言わずと知れた…」
「紫の上でしょ?」
「よくある間違いをご丁寧にしてくれやがったな。礼を言いてえくらいだ」
「えへへっ」
「褒めてねえ。作者は紫式部。藤原為時の娘で、一条天皇の中宮・彰子に使えた女房だ」
「ねぇ、何で女房は奥さんじゃないのに「そこは突っ込むな。後で自分で調べろ」
さすがにお勉強会も3回目になると華さんをあしらうのもお上手になりますね、冬獅郎くん!
この調子で華さんを普通レベルまで引き上げて下さい!
「源氏物語は全部で54帖あり、日本文学史上最高傑作と謳われる古典中の古典。その中でも、普遍的に『源氏物語』を指す部分が紫の上ゆかりの“桐壺”や“若紫”だろう。ここまでは大丈夫だな?」
「んー。まぁ一応?」
「ちゃんとノートを取れ、阿呆」
「源氏物語くらい楽勝だよ! 光源氏がいろんな女の人とにゃんにゃん「それ以上言うな此処は裏館じゃねえ表だ」
そうですよ華さん!
うまく濁して下さい!
デリケートな問題なんですから!
……にしても、今日は本当にスムーズに進んでおりますね。
少々つまらな……いえ、誠に結構なことです。
「ともかく、源氏物語は子どもに説明しがたい描写も多いが、それだけじゃねえ。これは光源氏を軸とした多くの人間の人生の物語だ。今と変わらない苦悩も悦楽も鮮やかに描かれている。ここから得た感情は各個人のもので、正解なんざどこにもねえ。だから問われるのは最低限の事実だと思え。いいな?」
「……うん。なんかすっごく納得出来たよ。さすが日番谷!」
惜しみない笑顔がとても眩しいですね、冬獅郎くん。
おや?
華さんがいつもより素直なせいか、冬獅郎くんも今日は素直なようですね。顔が赤くなっておりますよ。
ふふ。可愛いですねぇ。
これぞ青春――。
「でさ、日番谷のタイプは何話に出てくる? 教えて〜」
「……は?」
「まずそっからやろーよ! あたし頑張るねっ!」
「テメェ…俺の話聞いていなかったな!?」
「聞いてた聞いてた。で、何話? てゆか、誰?」
「〜〜〜ッ!!! 知らん!! もう勝手にやってろ!!!」
あぁ、待って下さい冬獅郎さ………行ってしまわれました。
もう。華さんがいけないんですよ。せっかくいい雰囲気で締まりそうでしたのに!
「日番谷ってばほんと短気なんだからー」
いやいやいやそうですけれどもね!
今回もあなたにかなりの非がありましたよ!?
「……知りたかったなー、日番谷のタイプ。何帖に出てくるんだろ」
でしたらもう少し真面目に―――、ん?
何でしょう。違和感を感じたような…。
「さて、と! 日番谷追っかけちゃおーっと!」
あっ!
待っ……また行ってしまわれました。
不肖の佐々木、置いてけぼりでございます。
まぁ、何だかんだ、青春なされているようで。
センター試験まであとわずかです。
華さんの運命や如何に?
長らくお待たせ致しました。
次回は10月下旬頃に更新予定です。
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