駄文2

□子供の領分〜入学
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 期待一杯
 不安一杯
 入学式は誰もがいろいろな意味で、興奮気味になる。
 初めてだらけで、刺激されっぱなしだ。
 このクラスで、高校生活がスタートするんだ。
 ドキドキ、ワクワクしながら挨拶をかわしあう。

 俺は、教室に入るなり静かに席に付いた。
誰かと目が合えば、人当たりの良い笑顔を浮かべて会釈する。
 愛想笑いも、うまくなったものだ。
 何人か好奇心にかられて、声をかけてくれたけど、自分から声をかけるつもりはなかった。
 正直に言ってしまえば、あまり目立ちたくなかった。
 友達が欲しくないと言えば嘘になる。
 でも、家の事を知ったとたん、皆よそよそしくて、仲良くなっても安心しない。
 逆に…つらい。
 いじめにあっているわけではないけど、見えない壁を感じていた
 声をかけてきたクラスメイトに、あたりさわりのないように答えていたら、一段と賑やかな集団が入ってきた。
 たぶん、中学が同じなんだろう。心から仲良く話している感じが、なんだか羨ましかった。
 その中に、ちょっと人目を引く子が一人。
 顔立ちもかなりいいし、雰囲気も明るい。
 同じ男に対して失礼だけど、可愛らしいと思った。
 一年後に振り返ってみたら、あれは、同じ匂いを感じていたのだろう。
 類は友を呼ぶってね。あながち嘘ではないのだろうな。
 この時俺は、あの子が一人になった時にでも、声をかけようかと思った。
 急に、クラスがざわついた。
 教室に、二人の男子生徒が入ってきたんだ。
 二人は周りを気にすることなく、平然と会話をしながら席についた。
 背の高い方が荷物をおくなり、もう一人の生徒の席に近づいた。
 周りのクラスメイトが、ざわざわと話しているのに、まったく気にしていない。
 なんだか、衝撃を受けたと言ったら言葉が悪いかな。
 二人の雰囲気が、すごく羨ましかったんだ。
 背の高い方は、なかなかのイケメンだね。スレンダーな体をしているから、スポーツでもしているのかな。
 へえ、なかなかあんなタイプいないよね。
「ねぇ、かっこいいよね」
「このクラスで正解かも」
「いやぁん、かっこいい」
 ミーハーな女子が騒いでいる。
 まあ、その気持ちもわかるな
「おい、あいつ何者だよ」
「すげぇ、どこのやつ?」
 もう一人は、アーモンド型の目がくっきりしていて、何より雰囲気が違った。
 どちらかと言えば、堅気な感じかな。
 パンピーな他の子とは、なんか違うね。
 というか、彼が放つオーラに目が離せない。
 だんだん、彼が何を話してるのが気になった。
 もう、二人に話しかけたくて、ウズウズしてたんだ。
 彼と話している、もう一人の男子生徒が羨ましい。
  なんていうのかな、皆が話しかけないんだったら、僕が一番乗りしちゃうよ。 
 一番初めって、印象良いし。
 この時僕は、自分から話しかけないって決めていたことなんか、すっかり頭から消えていた。
 二人の元に歩みよった。
「あの、話してるところ邪魔して悪いんだけど。俺、椎名っていうんだ。椎名克彦。よろしく」
 二人の驚いた顔。
 今思い出しても、笑える。
「おれ、新田。新田薫。赤石中出身」
 すぐ後に声かけてきた奴をみて、今度は俺がびっくりした。
 さっきの男子生徒だ。こうして僕らの高校生活が始まった。
 出会うべくして出会った、なんて言葉が似合うかな。
 茅野は、小林のフェロモンに俺らがつられたなんて言ってたけど、たぶん違う。少なくても俺はね。
 どちらかというと、茅野に引かれたのかな。
 そんなことは、怒りだすから…言わないけどね。

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