Yuki's Love Story

□Tears drop
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「見つけた...夕月」


うさぎ小屋の前に座っていた夕月の背後から声が掛かり、振り向いた先には九十九が立っていた。


「...九十九くん」


彼はニコッと微笑んだ後、夕月の隣に並んで腰を下ろし、持っていた草を小屋の中のうさぎに与え始める。
モシャモシャと草を食むうさぎを見ながら、夕月は此処に居た理由を九十九に話すべきか迷っていた。

彼はきっと、一人になりたいと焔椎真に言い残してきた自分を探しに来てくれたのだろうから。

さわさわと涼しげな風が二人の間を吹き抜けていく。
夕月がどう切り出そうか逡巡していたら、それを遮るように九十九がぽつりと口を開いた。


「うさぎって、可愛いね」

「?...はい、とっても」

「うん、夕月も可愛い」

「え?えと......、」


突拍子もない言葉にどう返せばいいのか、戸惑う夕月を穏やかに見つめながら九十九は続ける。


「だけど知ってる?うさぎって、淋しいと死んじゃうんだって」

「えっ!?そうなんですか?」

「うん、だから夕月が心配...」

「僕、ですか?」

「平気?今日の夕月、なんか淋しそう」


そう言われて夕月は一瞬、瞳を揺らめかせた。
それほどに九十九の言葉は夕月の核心に触れていた。


「淋しいなんて......そんなこと...ない、ですよ」


内心の動揺を押し隠すように、ぎゅっと手のひらを握りしめる。
自分は一人なんかじゃなくて、周りには信頼できる温かな仲間が居る。
そう思い知ったばかりなのに...。

でも...戒めの手《ツヴァイルト》たちの絆を目にして、
少しだけ...ほんの少しだけ、
羨ましくて淋しいと感じてしまった。
そんな卑屈な自分が嫌で夕月は一人、此処に来ていたのだ。


「夕月、オレたちツヴァイルトは皆、夕月が好きで大切に想ってる」

「...はい」

「だから、淋しくなったら甘えていいんだ
よ」

「......っ、九十九、くん」

「一人で泣かないで?」


優しさに心が震え、じわりと潤みだした夕月の瞳から零れた一雫の涙を拭うように、
九十九は目尻にそっとキスをした。


「つ、九十九くんっ!?」

「...あ、今のルカには内緒ね」


胸の内に燻っていた淋しさはとっくに溶かされて、夕月は頬を染めながらも九十九に感謝の気持ちを告げた。


「ありがとう」



end.
2008.10.06@ここにルカがいたらバトルですねw

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