Yuki's Love Story

□DISTANCE
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パラリ、とページを捲る音だけが静かな図書室での唯一の音だった。
少し開けられた窓からは部活動に励む者たちの声が遠くに聞こえる。

優しい風がふわりとカーテンを揺らし、読書中の夕月の髪を撫でていった。
焰椎真は自分で持ち込んだ少年雑誌に飽きたのか、ぼーっと肘をついて向かいの席の夕月を眺めていた。放課後の図書室には二人の他に人は居らず静かだった。

委員会の会議に出席している愁生を待つ。という理由がなければ、こんな場所は静かすぎて居心地が悪いと焰椎真は雑誌をパラパラと捲りながら思う。

ふわり、と再び入ってきた風によって夕月の髪が揺れた。
色素が薄くサラサラな髪質は柔らかそうで、まるで繊細な夕月そのものを現しているみたいだと視線を外せずにいた。

(いきなり触ったら...驚かせちまうかな)

急激に髪に触れたい衝動にかられ思考をめぐらせていると、夕月が読んでいた文庫本から顔を上げて焔椎真の方を見た。
真正面から視線が合わさった瞬間、ふんわりと花が綻ぶように微笑まれ、焰椎真の心拍数が一気に上昇する。

(かっ、かわい...)

男に可愛いってどうなんだ?!と焦った思考で自分にツッコミを入れるが、本気でそう感じたのだから仕方がない。そんな内心を知らない夕月は無邪気に声をかけてくる。

「焰椎真くん。もしかして退屈ですか?」

「......別に」

多少ぶっきらぼうな言い方になってしまったのは、夕月の顔をまともに見れなかったせいだ。
照れるなんて俺らしくもない...。

「あ、そうだ!」

「!?なっ、なんだよ」

「あの、もし良かったら焰椎真くんの髪、触ってもいいですか?」

「は?」

「ずっと触ってみたいなって思ってたんです」

いや、ついさっき触ってみたいと思ったのは俺の方なんだけど...と内心ドギマギしつつも、にこにこと期待の眼差しで見つめられれば断る理由もなく返事をしていた。

「...好きにしろ...」

「ありがとうございます!じゃあ、ちょっとだけ...」

夕月は嬉しそうに本を閉じると腕を伸ばして髪に触れてきた。

「ふふ、思ってたとおりに柔らかいです」

「思ってたとおり?」

「はい、初めてお会いした時に触ってみたいな〜って思ってて。焰椎真くんの髪、ふわふわしてて柔らかそうだから」

「...変な奴」

楽しそうに話す夕月がたまらなく愛おしくて、こちらも口元に笑みが浮かんでしまう。
仕返しとばかりに自分も夕月の髪に手を伸ばした。

「お前の方が柔らかいだろ」

「そうかなぁ?」



穏やかに流れる時間。

合わさる視線。

柔らかな感触。

君とのdistnce。


end.

2010.6.27@焔夕も良いよ^^

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