Yuki's Love Story

□ゆうづき
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生まれてからこの歳まで、自分たちの世界には互いしかなく、それ以外は必要なかった。
随分と小さく、閉ざされた空間だったと今になって気づく。
それでも、あの頃の俺と焔椎真には互いだけが全てで拠り所だった。
持って生まれたツヴァイルトとしての宿命に、傷ついて、涙して。
そうして、二人して生きてきた。
互いを守り、守られながら。
そんな狭い二人だけの世界に新たな光が差した。


――夕月だ。

転生した夕月は男性で、女性であった前世のことを記憶していなかった。
けれど、本質は何も変わらない。
やさしく、そして何処か儚いまま...。
そんな夕月に惹かれていくのは俺だけではなかった。
反発しながらも夕月に懐いていく焔椎真。

焦りを感じた。
二人の距離が近づけば近づくほど、置いていかれる自分が惨めで、いっそ消えてしまえばいいと思った。

そんな闇に堕ちていく自分を掬い上げてくれたのは、他ならぬ焔椎真と夕月だった。いつのまにか二人の間に夕月が居るのが自然になっていて、夕月の笑顔が曇らないよう守っていけたなら。と、ささやかな夢ができた。



ふと見上げた青空に、白い月が浮かぶ。
淡く儚いけれど確かにそこに在って、自分たちを優しく見守っていてくれる。
まるで夕月みたいだと嬉しくなった。

夜の帳が下りれば月は一層、光り輝いて衆目の下に晒される。

だから、せめて...。
この夕方に見える淡い月だけは欲しいと願ってしまう。

夕月は、俺に必要な光だから...。


end.
2010.8.28@夕方に見える白い月を夕月(ゆうづき)と呼ぶそうで、そこから思いついた話でした☆

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