Yuki's Love Story

□Love Save
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「きゃあ!ごめんっ、祇王くん!」

中庭に響いた声とよく知った名に廊下を歩いていた九十九は、ひょいと窓から顔を出す。
そこには頭からポタポタと水を滴らせ
ている夕月と、ホースを持ったまま立ち尽くす女子生徒たちが居た。
どうやら花壇の水やりをしていた彼女たちが誤って夕月に水をかけてしまったようだ。
九十九は中庭に降りると子犬のように雫を降るっていた夕月にハンカチを差し出した。

「大丈夫、..じゃないね」
「九十九くん」
「祇王くん、ホントにごめんね!」
「あ、気にしないでください。僕もボーッとしてたから」

困ったように笑いながらも彼女たちを責めない夕月の優しさに九十九は切なげに微笑んだ。

その優しさがいつか、夕月自身を苦しめることにならなければいいのに、と。

そんな九十九の胸中など知らない夕月はハンカチで顔や髪を拭っているが、生地の薄いハンカチでは応急処置的にしか水分を拭えず髪や上半身は濡れたままだ。

「夕月、こっち」
「え?あのっ、どこに行くんですか??」
「そのままじゃ風邪ひいちゃうから」

夕月の細い腕を掴み、校舎とは反対方向へ歩いていく。
とりあえずは着替えが必要で、これは自分の欲目かも知れないが濡れた髪が頬に張りついて妙に艶っぽく、夏服のシャツは薄手で素肌がところどころ透けていて夕月の線の細さを強調している。
こんな無防備な姿を不特定多数の人間に見せたくはなかった。

――夕月は俺のだから...。

決して表には出せない感情を心の奥底に深く仕舞い込んだ。




夕月が連れられてきたのは九十九の所属するテニス部の部室だった。

「どうぞ入って。今は誰もいないから」
「お邪魔します」

九十九は自分のロッカーからタオルを取り出して夕月の頭をふわりと覆う。

「災難だったね、とりあえず俺のシャツを貸すね」
「え!?そんなの悪いです」
「でも、今日は体育の授業ないからジャージ持って来てないでしょ?」
「あ...、そうでした」
「それに俺のことなら心配いらないよ、これ着るから」

「じゃーん!」と、言いながらテニス部のユニフォームを出してみせたが夕月の表情は晴れない。
きっとまだ遠慮しているのだろう。なんて、いじらしくて愛おしい...。
九十九は「ふふっ」と柔らかく微笑んで夕月の頭を撫でた。

「俺が着てたシャツはやっぱり嫌?」
「っ!そんなことないです!!」
「じゃあ着てくれる?」
「...はい、迷惑じゃなければ...」

濡れたシャツを脱いで湿った肌を拭い終えた夕月の身体に、九十九はさっきまで自分が着ていたシャツを羽織らせた。
感謝の言葉を述べながらボタンを止めていく姿に目が離せない。

あ、もしかして...これが俗に言う”彼シャツ”なのだろうか?クラスの誰かが騒いでいたのを思い出す。
同性である夕月に対して使うのはどうかと思ったが、好意を持っているのなら間違いではないのかも知れないと納得する。

「男のロマンか...うん、確かに」
「ロマン??」
「ううん、なんでもないよ。教室戻ろうか、そろそろチャイムも鳴るだろうし」
「はい」

すっ、と差し出した手を素直に受け取ってくれる夕月が可愛くてどうしようもなく口許が緩む。
溢れる愛おしさに九十九はワザと繋いだ手を少し強めに引いた。途端、よろめいた夕月を抱き寄せて耳元に優しく囁く。


「...好きだよ」

友情でも愛情でもなく、それは一途な恋情。


end.
11.10.15@夏にupするはずが気づけば秋に・・・orz

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