Yuki's Love Story
□花ひらく
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「ユキ、生まれてきてくれてありがとう」
大切な人の大切な日にどんなモノを贈ればいいか分からず、
結局何も持っていない自分が渡せたのは飾り気のない言葉ひとつだった。
見開かれた夕月の大きな瞳からほろりと涙が零れて、泣かせてしまったことに動揺する。
もっと気の利いた言葉がなかったのかと語彙の少なさを痛感しても遅い。
まろみを帯びた頬を伝い落ちてゆく透明な雫は美しく、夕月の肌の白さを引き立てていたが泣かせるつもりで告げたわけではないからと、
涙に濡れる目許を指で優しく拭った。
「...あ、違うんです。泣いちゃったのは嬉しくて...、」
慌てたように弁明する夕月の涙が、哀しみの色を含んでいないことを知り安堵する。
それに加え、照れくさそうに涙を拭いながら微笑もうとする仕草が愛おしくて、ルカは目蓋にそっと口づけた。
やわらかく触れて離れていった唇を追う夕月の潤んだ瞳とルカの視線が交わる。
赤みが差した頬、ふわりと緩んだ口許、ルカが一番好きな眩しい笑みをたたえて最愛の人は告げた。
「ルカに逢えて良かった...」
その嬉しい言葉をそのまま返したくて、たまらず抱き寄せれば花のように甘い香りが零れ、胸をいっぱいにする。
夕月が生まれ変わるのを待ち続けた、途方もない日々が報われたようなそんな気さえしてくる。
あの枯渇するほどの飢えを満たせるのは、やはり夕月以外に有り得ないのだ。
「ルカ」
「どうした?」
「あのね、お願いがあるんだ」
ルカに抱かれたままの夕月が、ひょこりと顔を上向かせてくる。
そんな可愛いおねだりを叶えてやらないはずがなく、先を促すと耳まで赤く染めた夕月が小さく呟く。
「しばらく、このまま抱いていてほしい」
ぎゅっとルカの背に回された手に微笑んで、ルカは夕月の赤い耳許に唇を寄せた。
「お望みとあらば永遠に...」
end.
2012.0415@フライングですが夕月誕おめ!
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