Yuki's Love Story

□メロンクリームソーダの奇跡
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*ギャグです。
*キャラ崩壊してます、すみません。





初夏だというのに、この暑さは異常だ。街に出ると人の熱気と排気ガス、アスファルトの照り返しで余計に暑さが増した。

「暑っち〜」

パタパタと風を送り込むようにシャツをはためかせている焔椎真の隣で、夕月も額に滲む汗をハンカチで拭っている。

「ユキ、大丈夫か?」
「平気、とは言えないかな...。ルカは涼しそうだね」
「ああ、俺は平気だ。...どうすれば楽になる?」

ルカが夕月の両頬を包んで瞳を覗き込む。

「あ、ルカの手、冷たくて気持ちいい」
「なら、このままでいる」
「うん」


............。


「だぁああっ!!クソ熱っち〜!!」

なんなんだ!?この天然バカップルは!俺を熱中症で病院送りにするつもりか?などと胸中で突っ込んでいると、盛大に溜め息を吐いた愁生が「少し休んでいこう」と提案してきたので即座に賛成した。




 メロンクリームソーダの奇跡



せっかく外の暑さから逃れてきたというのに、不快指数が増しているのは目の前に座る男のせいだ。
何故、この並びで座ってしまったんだと悔やんでも後の祭り。
一時的に暑さが凌げるとはいえ、こじんまりとした空間で顔を突き合わせる羽目になるとは...。
嫌なら見なければいいのだが向かいの席だからどうしても視界に入り、その都度不快指数が上っていく。
しかも普段は無表情の癖に、隣の夕月に話しかけられると微笑んで相槌を打っていたりする。
なんだ、その胡散臭い顔は。引きつる頬を隣の男に向けて焔椎真は小声で話しかけた。

「愁生」
「なんだ?」
「席、替われ」
「は?......ああ、そういうこと」

流石、付き合いが長いだけあって愁生は焔椎真の心の中を正確に読んだようだ。
持つべき者は頭の切れるパートナーだよなぁ。と、感動していたのだが。


「嫌だ」
「なっ!?おまっ!」

あまりの返答に思わず声を上げ、尚かつテーブルの脚を蹴ってしまった為に派手な音を立ててしまう。

「焔椎真君!?どうしたんですか?」

夕月が驚いたように問いかけてくるが言える訳がない。目の前の男から少しでも距離を置けるように席を替わってくれと頼んでいたなどと。

「いや、悪りぃ...。なんでもねぇから気にすんな、な?」
「...?はい...」

きょとり、と首を傾げて心配そうに見つめてくる夕月の可愛さといったら!...それは置いといて。
向かいから禍々しい殺気と冷たい視線が焔椎真の身に刺さりまくる。売られた喧嘩なら買いたいところだが、今は抑えておく。
テーブルの下で愁生が俺の足を思いっきり踏みつけているから。
マジ痛ぇ...。

「ごめんね夕月。焔椎真は暑さで頭がヤラレているんだ」
「へ?」
「ぅおいっ!!」

愁生のあまりの言様にまた突っ込んでしまった。いや、突っ込むだろう普通。

「ふふっ」
「夕〜月、何笑ってやがる」
「ええっと、二人のやり取りが可笑しくて...ふふっ。今更だけど仲いいんだなぁって羨ましくなりました」

「じゃあ、俺とももっと仲良くなろう。夕月」

愁生が向かいに座る夕月の両手をぎゅうっと握りながら、常にない心からの笑顔で言うもんだから俺は固まった。学園の奴らが見たらさぞや黄色い悲鳴を上げただろう。
いや、これが愁生の”素(す)”だってことはわかっているけど。実際、口説き文句を笑顔で囁いているところを目にしてしまうと何とも言い難い。だが、夕月は何の躊躇いもなく「はい!もちろんです嬉しいです!」とこちらも満面の笑みで応えている。

(天然って恐ろしい...)

ルカからピリピリとした殺気が飛ばされているが愁生は素知らぬ顔だ。



その時――。
「お待たせしました〜コーラのお客様〜」

にこやかなウェイターが注文した品を運んできた。愁生は仕方なくといった風に夕月の手を放してグラスを受け取る。
最後に「メロンクリームソーダでございま〜す」と夕月の前にグラスが置かれた。
「ご注文は以上でお揃いでしょうか?...ごゆっくりどうぞ〜」

妙な空気を一掃してくれたウェイターに感謝しつつ、「とりあえず飲もうぜ」と宣言し、焔椎真は喉の渇きを潤す為にストローを差して一気に吸い込んでいく。プハッとストローから口を離すと生き返った気がした。

「やっぱ喉渇いてる時には炭酸だな!」
「馬鹿の一つ覚えか...」
「くっ...!」

まるで止めの一撃を喰らったように俺の心は折れた。ぽっきりと。今日は厄日だ。本当にあるんだなぁ〜。
「あ〜あ」座席の背もたれにだらしなく体を預けて天井を見る。

まぁ、でも...。
顔だけを戻して夕月を見やれば、メロンクリームソーダに乗ったアイスを口に運んでいる途中だったようで、パクリとスプーンごと口に含んでいるのが見えた。
その幸せそうな顔と言ったら...。それだけで癒される自分は安いものだ。

ぼーっと眺めていたら夕月が視線に気づいてにっこりと笑いかけてくれる。
そして、スプーンに掬ったアイスをこちらに向けて、天使のように微笑んだ。


「焔椎真君もアイス食べます?」



end.

2012.0624@ほっつーは馬鹿可愛いねってのが言いたかった(褒め言葉)

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