Yuki's Love Story
□甘やかな胸の痛み
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*モブキャラ注意
二人が神社の入り口、鳥居の下に辿り着くと祭りの喧騒が一段と大きく聞こえてくる。
鳴り続けていた胸の鼓動は祭りの期待感へとすり替わり、夕月は瞳を輝かせて大鳥居をくぐり抜けた。
その刹那、耳許で誰かの声がした。
――『、...子...じゃ』
「っ?」
すぐ近くで聞こえた声に辺りを見回すが誰も居らず、そんな夕月を庇うようにルカも周囲を警戒している。
やはり誰かがいたのだろう。
けれど、ちらりとも姿が見えなかったのは妙だ。
「ルカ...まさか、悪魔(デュラス)?」
「いや、違うな」
神域だからと言って悪魔が現れないとは言い切れないと天白が話していたのを思い出す。
現に悪魔であるルカも平気で鳥居をくぐっているのだ。
けれど悪魔ではないとルカが断言している。
それならば先ほどの声は何者なのか。
「...誰?」
祭りの華やかな灯りは鳥居までは届いておらず、薄暗い周囲を探るように夕月が声を零す。
するとまるで、それに応えるかのように辺り一面が急激に真っ白な光に覆われてゆく。
体の輪郭も朧げになるほどの目映い光のはずなのに、普段と変わらず目を開けていられ、眩しさを感じないことを夕月は訝しく思った。
「ユキ、大丈夫か?」
頭上から声がしてルカが護るように背後から抱き寄せてくれていた。
見上げると眩しそうに腕を翳しながらも真摯な眼差しがこちらに注がれている。
また胸が騒ぎ出しそうになるのを抑えて夕月は状況を把握するのに努めた。
「うんっ!僕は平気。ルカは?」
「なんともない」
そうは言うもののルカは片腕を翳したままで、彼にはこの光が眩しく感じられるのだろう。
とにかくこの光をなんとかしないと。と、夕月は周囲に視線を走らせた。
「あのっ!誰なんですか?姿を見せてください!」
『お戻りください、我らが巫子よ』
さきほどの声がはっきりと聞こえたかと思うと無数の白い糸が夕月を目掛けて四方八方から伸びてくる。
ルカは間一髪で夕月を逃がすが、その白い糸は全てルカを拘束する為の物だった。
チッ、と舌打ちをして四肢を拘束する糸を引き千切ろうと力を入れるがビクともしない。
そればかりか糸から蒼い炎が燃え上がり始める。
「っ!?ルカっ!」
思わずルカに駆け寄ろうとした夕月だったが背後から何者かに抱き上げられてしまう。
「!?誰っ?放してっ!」
『巫子よ、落ち着きなさい』
「やだっ!だってルカが!」
『あれを見なさい』
促され視線を向ければ燃え上がる蒼い炎の中、ルカが糸を引きずるように歩いてくるのが見えた。
「ユキ、俺は平気だ。痛くも痒くもない。だから待ってろ、すぐに助ける」
「うんっ」
口元に笑みさえ浮かべて言い切ったルカに夕月はホッと肩の力を抜く。
そして自分が置かれている状況からどうにかして脱しようと頭を巡らせる。
自分を横抱きにしている男はルカほどではないが整った顔立ちをしていて、少年とも青年とも判別しにくい外見だった。
しかも腕の力が強く、簡単には腕から抜け出せそうにない。
頭の後ろで高く一つに結われた長い髪は白く、瞳が金色に輝いている。
やはり人とはどこか違うようで。悪魔でないとすれば・・・まさか神様?
一瞬そう思ったがルカに向けられている冷たい視線にその考えは雲散する。
さらに男は視線と同じく冷たい声で言い放つ。
『巫子をまるで己のモノのように言うのだな、醜い悪魔め』
「お前こそ、ユキを勝手に”巫子”呼ばわりするな。ユキはユキだ」
『ふっ、ほざいていろ。巫子はすでに我らの手の中だ』
20120830@すみません、まだ続きます...