Yuki's Love Story

□甘やかな胸の痛み
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*モブキャラというかオリキャラ?出ばってます;



夕月を抱えたまま男はじり、と後ろに下がる。
強気な口調とは裏腹にその表情には焦りが滲んでいて、全く怯まないルカを恐れているように見受けられた。
その間にもルカはロクサスを出現させ真っ白な空間に向けて一振りする。
ブワリと風が巻き起こり目映いばかりだった白い光の空間の一ヶ所に亀裂が走り、そこから光が薄れていく。

「遊びはここまでだ。痛い目見たくなかったらユキを解放しろ」
『クッ...』

この状況に夕月もすかさず男に言葉を投げかける。

「あの、お願いです。僕を降ろしてください」
『巫子...何故、悪魔などに心奪われてしまったのですか?』
「ルカは悪魔だけど、優しくて強くて、温かいんです!」



――だから叶うなら、ずっと一緒に居たい...。

ルカの意思を無視して、まるで束縛するようなことを思ってしまうのに後ろめたさを覚え、夕月の胸がチリリと痛む。
前世の記憶を持たない夕月には現世で出逢ってからのルカしか知らない。
しかも彼は自分のことを多くは語らないから...。


もっと知りたいと思う。
その優しさの根底にあるモノを、そしてルカの心を...。

トクン、トクンと再び鳴り出した緩やかな鼓動に切ない苦しさが混じり、夕月は耐えるように唇を噛み締めた。





『な〜にやってんだ〜兄者っ!』

ふいに間延びした声が響いたかと思うと次の瞬間、ギィンッと鋼がぶつかる音がして夕月は慌てて視線を巡らせた。
そこにはロクサスを構えたルカと刃を交わす新たな人物がいた。

『巫子様を取り戻したんだから悪魔なんざさっさと片付けようぜっ!』

一旦、刀を引いて後方にひらりと飛んだ男が膝を曲げて深く沈みこみ、その反動でルカに斬り掛かっていく。
夕月を抱えた男と双子のように瓜二つの顔で、違いと言えば白い髪の長さぐらいだろう。
顎下のラインで切り揃えられた白髪がさらりと揺れる。

『ならば、奴の処分はお前に託したぞ。我は力を使いすぎた故』
『ちぇ〜結局、兄者が美味しいとこ取りかよ〜』
『無駄口を叩いている暇はないぞ、前を見ろ』
『?...うわっ!』

紙一重でルカの攻撃を躱した男は懐からもう一本、刀を取り出して二刀流に構え、そこから剣劇を繰り出す。
が、子供をあしらうように軽くいなされ、まるで相手にされていない。
わざと手加減されているのが丸解りで男は隙を探る為、距離を取った。

『くっそ〜、兄者が適わないわけだ...』
『おい、我は先にゆく』
『えぇっ!劣勢だってのに捨て置くってのかよ!?ひっでぇ〜!もし俺が死んだらどうすんだよ!?』
『巫子の為に命を使えるんだ、光栄なことじゃないか』
『俺だって巫子様をお連れしたかったのに!...っ大体、先に巫子様を見つけたのは俺なんだぞっ!』
『くだらない。お前が知り得たことは我にもすぐ伝わる。我らは一心同体なのだからな。そんなことよりも我らが今すべきは巫子を無事に神殿までっっ...!巫子よ!暴れてはなりませんっ!!』

「いつまでも大人しく捕まっていられるわけないでしょ!」

男たちが言い合いをしているのを好機と捉えた夕月が腕の中で激しく藻掻き、さらには握った拳を男目掛けて放つと見事に美しい頬に決まってしまった。

「ごめんなさいっ!」

ぐらりと力の抜けた腕から飛び出した夕月に二刀流の男が追いすがるがルカが素早く助け出す。

『ちっ!何をやってるんだ兄者!せっかく巫子様をお救いしたってのにっ』
『っ...、巫子があんなにじゃじゃ馬だとは...』

赤く腫れた頬に手をやりながら男が悔しげに呻く。

「ルカ、大丈夫?ケガはない?」
「ああ、平気だ。ユキの方こそ大丈夫か」
「うん!でも、あの人殴っちゃった」

自分が捕らえられていたというのに男を心配げに窺う夕月の髪をルカがくしゃりと撫でた。



20120917@次で終わらせたい...orz
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