Yuki's Love Story

□空蝉 ―愛おしく、切なく―
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――ようやく見つけた眩しい光は『彼女』と同じ輝きを放ち、この腕の中に閉じ込めたくて仕方がなかった。

――だが、狂おしい程に求めていた光は、全てを忘却していた...。


空蝉 ―愛おしく、切なく―



夕焼けが空を茜色に染める頃、黄昏館では夕月の帰りを待つ男が窓枠に背を預けて外を眺めていた。
スラリとした体躯に端正な顔立ち、切れ長の瞳は銀色で。彼には世の女性を惹き付ける魅力があった。
ただ、唯一人を覗いて他人に興味のない彼にとってはどうでもいい話だろうけれど。
橘はそんなことを思いながら、おもむろに声をかけた。


「んふふ〜、夕月くんが心配?」

「......」


返答はなく、視線だけを迷惑そうにこちらに向けてくる。
明らかに不機嫌な様子が見て取れたが、構わず橘は話し続けた。


「今日はいつもより帰ってくるの遅いよねぇ、護衛に叢雨姉弟がついてるから大丈夫だとは思うけど」

「...ユキに何かあれば、俺が助けに行く」

「いや〜頼もしいねぇ、流石!夕月くんの騎士様!」


橘が囃し立てるのを煩わしそうにしながら、ルカの意識はいまだ帰宅していない夕月に向いていた。


(騎士...そんな資格、俺にはない)


この手でユキを守りたいと願うのは真実。
けれど彼は?それを望んでいるのだろうか?

触れたくて堪らないのに、少しの戸惑いが生じてしまう。
それは拒否されることへの恐怖心。
ユキに必要とされないのなら、自分の存在意義は?


眩しい夕陽のオレンジを銀の瞳に映し込みながら、ルカは夕月の帰りを待ち続けていた。




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