Yuki's Love Story
□空蝉 ―愛おしく、切なく―
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いつもの通学路から幾分離れた場所にある、アンティーク調の可愛らしい外観を持つ店舗。
そこは知る人ぞ知る、隠れ家的なアクセサリーショップだった。
「夕月ちゃん、この中だったらどれがいいかな?」
「えと、僕は蝶のモチーフが可愛いと思います。十瑚ちゃんに良く似合ってて」
「ホント?ありがとう!じゃあ、これにするわ」
本来なら学校が終われば、まっすぐ黄昏館に帰るのだが、たまには息抜きも必要だわ!
と、いう十瑚に付き合う形で夕月、九十九も絶賛寄り道中である。
「夕月、ごめんね。十瑚ちゃんの買い物に付き合わせちゃって」
「いいえ、とんでもないです!僕もアクセサリー見るの好きですから」
「夕月ちゃん優しい、大好きっ!」
「わっ、十瑚ちゃん!?」
ガバッと抱きつかれ、頬を染めつつ慌てる夕月を微笑ましく見ながら、九十九は姉にさり気なく釘を刺す。
「十瑚ちゃん、あんまり遅くなるとルカに怒られちゃうよ」
「うーん、それもそうね。それじゃあ、これ買ってくるわね」
先程、夕月に選んでもらったブローチを持ってレジへ向かう十瑚を見送った後、夕月は近くの棚に品良く飾られていたアクセサリーパーツを興味深そうに眺めていた。
この店には既製のアクセサリーの他にも手作り用のパーツも売られている。
その中のいくつかのパーツを手にして、悩んでいるような夕月の姿に九十九が優しく声をかける。
「夕月も欲しい物あった?」
「..あ、はい。...でも迷ってるんです」
「どうして?」
「...ルカ、喜んでくれるかなって」
いじらしい少女のような純粋さに九十九は頬を緩めた。あの男が夕月が選んで作った物を拒むはずはないと決まっているのに。
「ルカにアクセサリー作ってあげるんだね」
「はい、気に入ってくれるといいんですけど...」
「やっだぁ!夕月ちゃんの手作りだったら喜ぶに決まってるじゃない!」
「っ!!十瑚ちゃん!?」
会計を済ませて、いつのまにか戻ってきた彼女が勢い良く夕月の肩を叩く。
「絶対、大丈夫よ!ねっ、九十九!」
「うん、大丈夫だよ夕月」
「ありがとう。十瑚ちゃん、九十九くん」
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