Yuki's Love Story
□空蝉 ―愛おしく、切なく―
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三人が連れ立ってアクセサリーショップを出ると太陽はだいぶ傾いていて空の色は紫がかったグラデーションに美しく染められていた。
キン、と冷える空気が店内で暖められた体から熱を奪っていく。
「陽が落ちるの早くなったわね〜。それにとっても冷えるわ」
「十瑚ちゃん、夕月も。これ使って?」
白い息を吐き出す二人に、九十九は通学鞄から取り出したカイロを手渡した。
「さっすが九十九!」
「うわ〜嬉しいです、ありがとう」
ふんわりと微笑んで、お礼を言う夕月に九十九も十瑚も釘付けになる。
ツヴァイルトだからではなく、夕月の笑顔には人を惹きつける魅力がある。
と、いうのが叢雨姉弟の共通認識だった。
「夕月が風邪ひくと怒られちゃうからね」
九十九は穏やかな笑みを返し、そっと夕月の頬に触れようと手を伸ばす。
が、しかし寸でのところで何者かによって遮られてしまう。
「ルカ!」
夕月の言葉通り、九十九の腕を掴んだ男は留守番をしているはずのルカだった。
漆黒の髪から覗く銀の瞳が夕月を捉える。
「ユキ、遅いから迎えに来た」
「あ、ありがとう!ごめんね、心配かけて」
「いい、俺が勝手にやったことだ」
くしゃりと夕月の髪を撫で、そのまま頬に手を滑らせると少し冷たくて。
ルカは無意識に纏っていた黒のロングコートの中に夕月を抱き寄せる。
「えっ、と...ルカ?」
「こうすれば暖かい」
「うん、そうだけど...あの、えと...」
「どうした?」
かぁぁっ、と頬を染めて戸惑う夕月の心情を全く理解していないルカに、十瑚は苦笑しつつ助言する。
「ルカ、あのね。夕月ちゃん恥ずかしがってるのよ」
「恥ずかしい?」
「...う〜ん、どういえばいいのかしら。九十九お願い」
「つまり、ルカって目立つでしょ?そうすると必然的に夕月も注目を浴びるから」
「ああ、そういうことか...」
コートの中の夕月を窺えば、困ったような笑みを返される。
そんな顔させたいわけじゃないのに、こうして迎えに来たのは間違いだった。
それに無意識の行動とはいえ、こんな風に夕月の意思も考えずに触れてしまった。
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