Yuki's Love Story

□空蝉 ―愛おしく、切なく―
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「困らせて悪かった、ユキ」

「ルカっ?待ってっ!」

夕月は離れようとしたルカのコートを咄嗟に掴んで引き止めた。

「ユキ?」

「違うんだっ!これは困ってるんじゃなくてっ、そのっ...!ルカが綺麗でカッコいいからっ!...あ、」

ぷしゅう〜、と音がしそうなほど真っ赤になった夕月は、思わずルカの胸元に顔を埋める。

「ユキ?」

「...なん、でもない」

「?」




「クスクス、あそこだけ気温上昇だね」

「十瑚ちゃん、オレたちは先に帰ろう」

「そうね、邪魔しちゃ悪いもんね」

それじゃあ、お先に。十瑚は小さく呟くと、九十九と共に帰路につく。
その後ろ姿を視線で見送りながら、ルカはいまだ顔を隠したままの夕月の背中に、そっと腕をまわした。

「...ルカ」

くぐもった声が聞こえた後、目許を薄ら桃色に染めた夕月がそろりと顔をあげた。
その艶を含んだ表情にルカは目を見張る。

美しく穢れのない綺麗なユキ...。
この手で守りたいと切に願う。

「帰ろう、ルカ」

「ああ、もうすぐ陽が沈む」

はにかむように笑った腕の中の存在に、ルカは愛おしそうに眦を下げた。
それはよく見ていないと分からないぐらいの微妙な変化だったけれど、夕月は見逃さなかった。

「やっぱり綺麗...」

小さく感嘆した夕月は、ルカの腕の中で幸せそうな笑みを称えた。

命を賭して守ると誓った最愛の存在は今、こんなにも近くで笑っている。
それならば、ユキが自分を必要とする内は、傍に居て守り抜いてみせよう。


ーー俺はお前を裏切らないよ。


空にちらばりだした星々がいっそう輝きを増し、夜が訪れようとしていた。



end.
2009.1.12@はい!終わりですよ〜なんか続きそうな感じですが、一応終わりです。つか、ルカへのアクセはどうなったんだよ!と突っ込まれそうですが、後日談として書く予定なので。。。おつきあい、ありがとうございました!
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