Yuki's Love Story
□熱量メーター
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「ルカ。少しの間、夕月を借りるよ。何せ緊急なんでね」
釈然としないものの、緊急という言葉に踏み留まったルカをちらりと確認してから、天白は腕の中にすっぽりと収まった夕月に微笑みかけた。
「夕月、食事はきちんと摂っているかい?」
「?はい、遠間さんの料理、とても美味しいので」
「そうか。なら、いいんだ...」
夕月を抱いている天白の腕がさわさわと体を撫で回し始めた。
這い回る手に夕月がぴくぴくっと反応を返す。
「...天..白さん?くすぐったい、です...」
「クス、可愛いね夕月は。もう少し我慢してくれるかい」
「タカシロッ、いますぐユキを離せっ!...殺すぞ!」
「怖いなぁ、ルカは...」
完全に戦闘態勢に入ったルカを前に、天白は敢えなく夕月の体から腕を解く。
このままだと黄昏館が破壊されかねない。
すかさずルカは夕月を後ろに匿いながら天白を睨みつけた。
瞳で射殺すという事を実現してしまいそうな鋭い視線を余所に、天白は顎に手をやりながらにっこりと一人、納得の表情を浮かべている。
「やはり私の推察に間違いはなかったようだ」
「わけの分からないことを言いやがって...セクハラ野郎」
「口が悪いね、ルカ。私はただ、夕月のサイズを確かめていただけだ」
「サイズ...?」
「そう、私の大切な夕月にぴったりの服を買う為にね」
天白はルカの背後から、ちょこんと顔を出す夕月に微笑んだ。
「...あんな方法でサイズが分かるわけがないだろう」
「私の特技だよ。現に夕月のクローゼットの中の服はどれもサイズぴったりのはずだが?」
「あ!そう言えばそうです!まるで誂えたかのようにぴったりでした!」
セクハラまがいのことをされたのを気にも留めないのか、素直に感嘆する夕月に天白は一層笑みを深くする。
「良い子だね夕月は」
「チッ...」
「あれ?でも僕のサイズを測ったのって今日が初めてですよね?それまでの服はどうやって買って下さってたんですか??」
「......ん?ハハハ」
「触る意味はなかったってことだな...。タカシロ、覚悟はいいな」
「おっと、もう時間だ。残念だが私は失礼するよ」
天白は爽やかな笑みを向けて二人の傍らを通り過ぎて行く。
その間際、ルカだけに聞こえるトーンで爆弾発言をかました。
「夕月の感度は申し分ないよ」
「...っ、本気で殺すぞ!」
「ル、ルカ?どうしたの?」
「それじゃあ夕月、また会いにくるよ」
「あ、はいっ!天白さんもお元気で」
片手を軽く挙げて天白は庭先を後にした。
背後から突き刺さる殺気を感じたが天白の表情は非常に楽しげで、待たせていた秘書の式部からは溜息を吐かれる程だった。
end.
2009.5.31@なんだこれ...汗。天白さまファンの方、すみません;