Yuki's Love Story

□La punition
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昼休みの喧騒の中、夕月は文庫本を片手に廊下を歩いていた。
開け放たれた窓から吹き抜ける柔らかい風が気持ち良くて、歩みを止めると誘われるように窓際へと近づく。
抜けるような蒼穹を瞳に映して、ルカも同じ空を見ているだろうか?そうだったらいいな。と考えて、夕月はひっそりと口元を綻ばせた。


「あっれー?ギオウくん、だっけ?」

「えっ?はい、そうですが...?」

突然、声をかけられて夕月は驚きながら振り向いた。
傍にはいつのまにか二人組の少年が夕月を見下ろすように立っていて。
赤色のネクタイで二年生だと分かるが、全く見覚えのない者たちだった。

「近くで見ると、尚更カワイイよなぁ〜」

「けど、一人って珍しくね?」

「ああ、せっかくのチャンスを見逃すわけにいかないな」

「あ、あの?僕に何かご用ですか?」

意図が分からず戸惑う夕月を二人は左右から挟んで、にやにやと卑しい笑みを浮かべる。
けれど、そんな風に見られたことのない夕月は彼らの笑みがどういった類いのものか気づいていない。

「俺たち、君に興味があってさ。ちょ〜っと付き合って欲しいんだわ」

「ここじゃなんだから、場所移動しようぜ」

「でも僕、昼休みが終わる前に図書室に行きたいんですが...」

「なら、ちょうどいいじゃん!一緒に行ってやるよ」


なにか嫌な感じがして夕月は困惑するが、肩に腕をまわされて半ば強制的に歩かされる。
得体の知れない不安があるけれど、ここは学園内でデュラスの影もないし、もしかしたら同じ学年の十瑚ちゃんか愁生くんの知り合いかも知れない...。
そう結論づけようとした夕月が階段の踊り場に差し掛かった時、前方から来た人物が夕月を呼び止めた。

「夕月」

「あ、愁生くんっ」

「げ!碓氷」

階段から下りてきた愁生の顔を見た途端、夕月は不安が晴れたようにホッと笑顔を零した。

「夕月に何の用だ?お前たち...」

「いや、図書室に行くっていうから、付いていってやろうかと...」

「ふーん...。面識のない夕月を?そんな優しい奴らだとは知らなかったよ」

「う、うるさいっ!お前には関係ねぇだろーが!」

「残念。大いにあるんだ」

一歩、愁生が踏み出すと夕月の両隣にいた二人は顔を見合わせる。
もともと夕月の傍らに誰も居ないという絶好のチャンスだっただけに、よりにもよって厄介な風紀委員の彼が現れるとは予想さえしていなかったのだ。

「夕月は俺の大切な人だからね...返してもらうよ」

愁生は二人の男に挟まれた夕月の腕を取り、自分の方へと引き寄せた。

「夕月、図書室なら俺と行こう」

「はいっ」

「さて、お前たち...これ以上、夕月に関わるとどうなるか......分かるよな?」

ゴゴゴ、と今にも音が聞こえてきそうな威圧感に、二人組は顔を引きつらせて退散した。


―――触らぬ悪魔に祟りなし...。


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