Yuki's Love Story
□雪降る夜に
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ハッピーメリークリスマス!
毎年恒例の朝陽院でのクリスマスパーティーはジュースの乾杯で始まり、子どもたちは賑やかに手作りのクリスマスディナーを頬張っている。
みんなで飾り付けたツリーが部屋の真ん中に置かれ、ささやかではあるが心暖まるイベントに夕月も笑顔を零していた。
「夕月、楽しんでる?」
「奏多さん」
隣の席に腰掛けてきた年上の彼は、小皿に取り分けられたチキンを夕月の前に置く。
「あ、僕よりも他の子にあげてください」
「これは夕月の分だよ。まだ食べてないよね?」
「はい、でも...」
相変わらず遠慮がちな夕月に奏多は苦笑する。
院では夕月も年長のグループに入るとは言っても、まだ10才だ。
甘えることを知らない優しい子。
せっかくのクリスマスなのだから遠慮などせずに、みんなと同じように楽しい一日を過ごして欲しかった。
「そうだ、今日は夕月の願いごとを一つ、叶えてあげるよ」
「願いごと、ですか?」
「うん、僕からのクリスマスプレゼントだと思って受け取って?」
くしゃりと髪を撫でると夕月の口許が綻び、照れくさそうな笑みが浮かぶ。
「夕月の願いは何?」
「えっと......んーっと...」
普段、自分の望みなど口にしたことのない謙虚な彼には、少し難しい質問だったかも知れない。
悩める夕月に助け舟を出すように奏多は提案してみた。
「じゃあ、こうしよう。眠る前までに、どんな小さなことでもいいから夕月の願いを考えておいて?」
「小さなこと?」
「うん。例えば...冬休みの宿題を代わりにするとか、3時のおやつを一週間分とか?...あ、おやつは一週間限定にしてね」
イタズラっぽく話す奏多に夕月はクスクスと笑い出す。
「それじゃあ、何か考えておきますね」
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