Yuki's Love Story

□雪降る夜に
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***

クリスマスの夜、子どもたちが寝静まった夜中にサンタクロースがプレゼントを持って朝陽院を訪れる...。と、言っても本物ではなく院長先生による扮装だ。
けれどもそれが、夕月と同じようにサンタクロースの存在を信じている子の夢を壊さない為にとの朝陽院の教育方針だった。
もちろん、中にはその正体を知っている子も僅かにいたが、秘密を言いふらして回る者はいなかった。

年に一度のこの日を、誰もが楽しみに待っていたから。


消灯時間になり、一緒のベッドに入った夕月と奏多はヒソヒソと小声で話しながらサンタクロースを待ち構えていた。

「奏多さんはサンタさんに会ったことありますか?」

「残念だけど、僕もまだないんだ」

「じゃあ一緒ですね」

ふふふ、と掛け布団の下から嬉しそうな笑いが漏れる。

意識すればするほど近くに夕月の息づかいを感じて、奏多の胸の鼓動が早くなる。


―――自覚はしていた。

―――夕月に恋していると...。

いつからかは断定できないけれど、たぶん出会って間もない頃に。
親に捨てられ荒んでいた心に、まるで最初からそこに居たかのように自然と入り込んできた夕月。
以来、彼の隣が自分の居場所で、他の誰にも譲る気はなかった。

同性である彼に抱くべき感情ではないのは承知の上。
それでも、想うだけならば傷つけることはないから...。

ふいに身じろぎする音とともに、夕月の匂いが近づく。
寝返りを打ったのだろう。と思ったが聞こえてきたのは規則的な呼吸音。

「夕月?」

返ってくるのはスゥスゥ、という明らかな寝息で奏多は思わず苦笑した。
自らの体を横に倒すと、ちょうど向かい合う体勢になっているのが夜目にも分かる。

「夕月」

もう一度、声をかけて夕月の顔に手を伸ばす。
ふっくらとした頬に手を滑らせても目覚める気配はない。

(仕方がない、院長先生...じゃなかったサンタクロースが来たら起こしてあげよう...)


―――それまでは君を独り占めだ。

夕月の顔の傍に置かれた小さな手に手を重ねて、奏多は甘い夢に落ちていく......。

そこは、夕月との幸せな未来の光景――...



end.
2010.1.11@奏多さんを大人っぽくしすぎた...orz
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