Yuki's Love Story

□Melty*
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抱きしめたのは自分からだったが、抱きつかれるということを想定していなかった焔椎真は、夕月の指が背中のシャツを掴む感触に息を呑んだ。

腕の中にすっぽりと納まる細身な身体、淋しさを押し隠すいたいけな姿がたまらなく愛おしい。
自分の鼓動がいつもより早いのも気のせいなんかじゃないだろう。
この感情はもう騙しようがないものだった。

「俺...、夕月が好きだっ」

想いが言葉となって溢れ出す。
どう表せばいいか分からなかった夕月に対するモヤモヤした気持ちも、声に出してしまえば簡単なことだったのだ。

「好きだ、夕月」

溢れ出した感情は留まることを知らず、声が熱を帯びていく。
焔椎真の懐から顔を上げた夕月は瞬きも忘れて耳を傾けていた。その頬には朱が差し、夕月を艶やかに彩る。

「やっと、認めたな。焔椎真」

「う...」

俺の言った通りだろう?と、勝ち誇ったような顔の愁生に何も言い返せない。
急激に込み上げた羞恥心に困惑するが、どうしてだか心は満たされていた。多分それは、自分の気持ちを認めることができたから。

「...焔椎真くん。あの、ありがとう」

「べべ、別にっ!好きか嫌いかの二択なら、好きだってだけだ!」

「はい、うれしいです」

夕月のはにかんだ表情にまた一つ、心臓がドキリと鳴る。それを誤摩化すために夕月の髪をわしゃわしゃと掻き混ぜた。

「わわっ?焔椎真くん?」

「とにかくだ!今後、俺たちに隠れて泣くのは禁止だからなっ!」

「でもっ、ご迷惑じゃ...」


「夕月」

愁生の手が夕月の柔らかな頬のラインを包み涙の痕を拭う。

「泣き顔も好きだけど、やっぱり笑った顔のほうが俺は好きかな」

「すみません...。強くならなきゃいけないのに...お二人に恥ずかしいところを見せてしまいましたね」

「夕月は充分強いよ。君には何度も助けられたしね」

「ああ。俺たちなんかより、ずっと強いぜ」

夕月がいなければ自分たちは今頃どうなっていたか。
彼の迷いのない決断力は時に誰かを救う。そのことに本人は気づいてないらしいが。


「そんなことっ...」

「あるんだよ!...ほら、腹減ったから何か食いに行こうぜ」

焔椎真は夕月の頭をポンと叩いて部屋を出て行こうとする。その後ろ姿にちらりと視線を送った愁生は夕月の肩に手をまわして告げた。

「夕月、また泣きたくなったら...俺がベッドの中で慰めてあげる」

「え?一緒に寝てくれるんですか?」

「うん、夕月さえ良ければね」

ドアノブに手をかけていた焔椎真は二人の会話を聞いて即座に踵を返す。

「いやいやいや!ダメに決まってるだろ愁生っ!!それに夕月も喜ぶなっ!」

「?...じゃあ、3人で寝ますか?」

「〜〜っ!!」



end.

2010.3.30@(^p^)
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