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□薬
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現在の時刻は、朝の9時を少し過ぎたところ。
普段なら学校にいる筈の時間にも拘わらず、昶は部屋のベッドの上で、毛布を被ってぼんやりと目を泳がせていた。
とは言っても、ただ怠惰に時間を浪費している訳ではない。
38.2℃。それがついさっき計った体温だった。
つまり、風邪だ。
「ん、げほ……」
軽く咳をするだけで、嫌な痛みが喉に走る。
「あー、最悪」
頭は痛いし目眩はするし……。何より、熱が出たのなんか久しぶりだから、余計に辛い。
だが風邪薬もないし、自力で病院に行くことすらできないので、とりあえず耐えるしかなく……。
「そういや白銀は……」
どこに行ったのだろう。今朝から姿が見えない。
まあ今いられても、煩くて迷惑なだけだ。
……風邪で弱っているせいか、一瞬心細いと思ってしまった自分が凄く悔しい。
そんなことを考えながら、再び眠ろうとしたときだった。
ばんっ、と勢いよく開かれるドア。そして、
「昶ー!起きてるー?」
賢吾が飛び込んできた。
「っ!げほ、げほっ!!」
「うわ、ごめん!驚いた?」
「当たり前だ…!」
寝込みに突然怒鳴り込まれて驚かない奴なんかいないと思う。