GIFT

□束縛
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「おい賢吾」


昶がそれに気付いたのは、屋上でいつものようにだらだらとした時間を過ごしていたときだった。


「んー?」


それまでボーっとフェンスに体を預けていた賢吾は、その声に応えてそちらに首を向ける。

そこには、何かに激しく苛立った昶の顔。

…それを見たとたん、賢吾は周りの温度が一瞬で20℃くらい下がったような錯覚を覚えた。


「あ、昶……?どうかした?」


軽くたじろぎながら尋ねると、


「これ、何だよ」


いつもの仏頂面をより深くして、昶は賢吾の唇の端を中指で押した。


「え?……これ?」

「これ?じゃねえよ」


そこにあったのは、この前喧嘩した時に殴られてできた傷。


「ちょっと油断してたらさ、一発喰らっちゃって……」


そう言って、苦笑する。

だが、昶はそんなに簡単に済ませてはくれなかった。


「ふざけんな」

「……あ、ごめん……」


ぞっとする程怒気を孕ませた声で言われ、思わず反射的に謝ってしまう。

だが、それで許してもらえるなどとは微塵も思ってはいない。こんな状態の昶がこれ一発で引き下がったら、今日は槍が降る。


というか、なんで昶はそんなに怒ってるんだよ!?
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