SS 1

□永遠に共に
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エフラムがグラドから無事帰還したのは、季節を4回またいだ頃だった。

物資の供給、建造物の復旧作業、政治関連。

それこそピンからキリまでやらなければならないことだらけで、休む間も惜しんで働いた毎日。

親友の故郷、グラドの為。
そして少しでも早くルネスに帰り、愛しい人に…逢うために。


エイリークの方もルネスの為毎日寝る間も惜しんで働いていた。


ゼトの補佐もあって、国はかなり安定してきている。

逢えない寂しさを紛らわすかのような働きぶりに、ゼトは度々エイリークを諫めた。

しかし…


「…ごめんなさい、ゼト…」

寝室で横になるエイリークのそばで、ゼトは無言で薬湯を差し出した。

エイリークは上体だけ起こしそれを受け取って口をつける。


―怒っているのかしら…何度も休むように言ってくれたのに、結局こうして体を壊してしまって…―


「エイリーク様が謝る事はありません。こうなる前に私がもっと強くお諫めすべきでした。」

「いいえ、ゼトは何度も私の為に…けれど私は、忙しくしていないと…」

不意に涙がこぼれた。
見られないように俯く。

次の瞬間、大きな両の手に抱きしめられた。

薬湯が入っていた器が、エイリークの手から落ちて転がる。


「ゼト…?」

「もうこんなに弱ったあなたを見ていられません。あの時、何故エフラム様をお止めしなかったのか…っ」

「ありがとうゼト、でもあなたが心を痛める事はありません。
病気で少し弱気になってしまったのですね。もう休んで早く治します。」


ゼトはそれを聞いてゆっくりとエイリークから離れ、床に転がった器を拾い上げた。


「ご無礼をお許し下さい。どうかご自愛くださいますよう…失礼致します。」


「ありがとう。おやすみなさい、ゼト。」

ゼトは一礼して部屋を後にする。

エイリークはそれを見届けてから、ベッドに横になった。


―抱きしめられた肩が熱い…―


「ゼト…?」


薬湯のおかげもあって、エイリークはすぐに眠りについた。
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