仮想19世紀

□視線の意味は?
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また、背中に視線を感じる。

誰だろう?と気配を探れば、やはり…ミランダだった。このところ、やたらとミランダの視線を感じる。

(ミランダに何かをした、という記憶もないのだが…)

マリは食事をしながらミランダと関わった事柄を思い出してみた。

迷子になってオロオロしているミランダを見つけて正しい場所へ連れていったこと数回。
階段から(文字通り)落ちて来たミランダを受け止めた事が1回。
修練場で無理をして倒れたミランダを救護室へ連れていったことも数回。
迷惑をかけた、と自己嫌悪になり、己を責め続けるミランダを落ち着かせること多数。

…特別な感情がない、とは言わないが…私の耳はミランダの小さな悲鳴や迷子になって泣いている声も簡単に聞くことができる。だから、ミランダに意識を向けることが多いのは、ごく自然の行動であって、不自然な行動では、ない。

(しかし何故、こんなにも視線を感じなくてはならないのか…自惚れた考えの男ならば、好意を抱かれている、と解釈するのだろうが…私に好意を抱くなど、まず有り得ない話だ。)

盲目の巨人は己を過小評価していたので、少年たちや同世代の科学班たちにはない大人の魅力があることを知らなかった。

それ故に、自分がミランダに恋心を抱いていることは理解できても、相手も自分に恋心を抱いている、という考えにはなれず、ミランダの謎の視線に今日も戸惑うマリだった。
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