仮想19世紀

□告白
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「マリはミランダに愛の告白ってやつをなんでしないんさ?」

出し抜けに言われて、私は返事ができなかった。
私とミランダがお互いに好意を抱いていながら、交際していないことを周囲は不思議がっているようだ。

「・・・私が愛の告白をミランダにしないと、何か困ることでもあるのか?」

少し、大人気ないとは思ったけれど、あまり触れてほしくない話題であるのは確かだ。

「困る、ってことはない・・・けど両思いなのになんで言わないのか不思議で仕方ないんさ〜」

ラビのこの問いは、おそらく教団内で一致した疑問であろう。

「戦いが続く日々の中で、恋愛を優先させるわけにはいかないだろう?」

私の答えにラビは些か納得できない、という気配を漂わせた。

「それで本当にいいんさ?」

「そう、だな・・・この戦争が終わって、無事に生き延びたなら、私はきっと花束を持ってミランダにプロポーズをするだろうな。
もし、ミランダが死ぬようなことがあれば、この先、一生、誰も愛することはない」

ごくり、とラビが唾を飲み込んだ。
私の口からこんな台詞がでてくるとは思わなかったのだろう。

「私はミランダを誰よりも愛している自信がある。そしてミランダも同じだけ私を想ってくれている自信もある。だから、今は何も言わない」

『わわわわわたしも・・・マリさんが誰よりも好き、です・・・』

消えそうな声が突如、聞こえた。

「ミランダ?どこから・・・ゴーレム?」

そして全てを悟った。このお節介な年下のエクソシスト達がゴーレムを使って会話をミランダに聞かせていた、という事に。
ほどなくして、リナリーとアレンに付き添われたミランダが私の目の前にやってきた。

「あの・・・ママママ、マリさん・・・あの・・・私・・・」

何かを必死に言おうとするミランダを制した。

「ミランダ、こういうのは男から言わせてもらえないだろうか?」

きっと私の顔は真っ赤になっているだろう。わくわくとその瞬間を待つ年若い仲間たちの気配でもわかる。だが、それを見せてやる必要はどこにもない。

「・・・ミランダ。すまない」
「え?」

言うが早いか、私はミランダを抱き上げて、その場から走り去った。
向かった先は本部の周囲を囲む森の中。
深呼吸をして早鐘のような心臓を落ち着かせ、ミランダをそっとおろした。

「その・・・ミランダ。本来なら、周囲にお膳立てされて言うべきことではないのだが・・・」
どう、告げるべきなのか・・・
「ミランダ・・・」
「・・・はい」
「その・・・」
「・・・はい」

いざ、愛を告げようとすると中々、言葉が出ない。

「ミランダ・・・私の伴侶になってくれ、ないか?その、愛してるんだ」
「マリさん、わた、私・・・なんかで、ほほほ本当に?」
全ての想いをこめて、私はミランダを抱きしめた。

恋愛を戦いよりも優先させることはできない、そう思っていたけれど誰よりも愛しい、守りたい人がいるから、より強くなれるのだと、この日・・・気づいた。
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