仮想19世紀
□そこにあるモノ
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「き…きゃぁぁぁぁぁっ」
いつもと違う、怯えを含んだミランダの声が悲鳴が響きわたった。
何事?!と数人が駆け付けると踊り場で腰を抜かしたミランダがへたりこんでいた。
「ミランダさん!大丈夫ですか?!」
「ア、ア、アレンくん…だ、大丈夫よ…ちょ、ちょっとビックリしただけなの」
青い顔はしているけれど、外傷はなさそうだ。
「その…ごめんなさいね…大騒ぎして…」
どうにか落ち着いて謝るミランダはあたりをビクビクしながら見回している。
「なにかいるんですか?」
アレンもキョロキョロとあたりを見回して…有り得ないものを見つけた。
「え…?あれ、蜘蛛?僕の顔くらい、大きいけど…」
アレンの視線の先にデンッと天井からぶら下がる蜘蛛の姿に、そこに集まっていた人間は迷わず叫んだ。
『科学班〜!今度は何やったぁぁぁっ』と。
「と、とりあえず、あれをなんとかしなくちゃ。えーと…どうしましょう?」
振り向くアレンの額ギリギリをキラリと光る刃物が通り過ぎ、巨大な蜘蛛を貫い
た。
「神田!危ないじゃないですか!あれ?確かマリと任務で出て行ってたはずじゃ・・・?」
「うるさい」
たった一言ですべてを片付け、落ちて来た蜘蛛を麻袋の中に突っ込み、六幻を引き抜く。
麻袋の中で動き回るガサガサという音がなんとも気持ち悪い。
「か…神田、くん。それ…?」
恐る恐る、ミランダが尋ねると面倒臭い、と言うように
「イノセンスだ」
と、ぶっきらぼうにそれだけ答えるとスタスタと歩いていってしまった。
残されたのは腰が抜けたミランダと、事実を受け入れたくない、という顔のアレンたち。
「科学班じゃ…なかったんだ…」
巨大な蜘蛛=イノセンス、と、いう図式に生き物系の奇怪の調査やイノセンス回
収がとても嫌になったエクソシストとファインダーたちであった。