仮想19世紀
□Tonsure
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元々、神田の口の悪さ…というか言葉の足りなさからくるトラブルのフォローはしていたから、さほどに気になってはいなかった。
ミランダと出会ってから、彼女の起こす数々の騒動のフォローもするようになったが、これも私にとって全く問題ではない。
だが…ミランダと神田と私の3人が揃っていてのフォローとなると少々、勝手が違い、何故か疲労感がつきまとった。
ミランダの起こす騒動に誰かが巻き込まれた場合、たいていの者は「なんだミランダがやったのか」と慣れっこになっているため、何もおこらない。
だが神田の場合は、いつもの調子でミランダを責め立てるため、終わりが見えずにどんどんミランダが落ち込んでいってしまう。
その二人を止めに入るのは私が1番多く、次にリナリーだった。
ある日、ミランダが階段から転げ落ちた先に神田がいた。
落下してくるミランダを避けられず、抱き留める形になり…結果、言わなくてもよいことまで、私が行くまでいろいろと文句を言い放っていた。
私はまず、神田に言葉を選べと説教をした。
「チッ…いちいちうるせぇんだよ」
相変わらず、反抗的というか人との交流を持ちたがらない困った奴だ。
ついでミランダを落ち着かせながら部屋まで送り、その帰り道、ふぅ、と溜め息をつく私に珍しくブックマンが話しかけてきた。
「おぬしも大変じゃのぉ。そのうちハゲるぞ」
「まさか…なにを根拠に?」
「経験じゃよ」
それだけ言ってブックマンは立ち去っていったが、『ハゲる』という言葉に最近の抜け毛の量が脳裏をよぎった。
そして…私は頭を剃るべきか悩み、ミランダに相談することにした。
「…ミランダ、私がスキンヘッドになったら、どうする?」
「スキンヘッド、ですか?」
「ああ。頭を剃ろうかと思ってな」
「いまの髪型も素敵ですけど、スキンヘッドも素敵だと思いますよ?」
にこにこと微笑むミランダの言葉に背中を押されて、私は綺麗に頭を剃った。