仮想19世紀

□HAPPY BIRTHDAY
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任務を終えたアレンは真っ先に食堂に向かった。
任務先でも食べ物に困ることはなかったけれど、ジェリーの料理を食べ慣れてしまった胃袋は、とにかく食事!と訴えている。
それに付き合わされる、というか付き合わなくてはならないリンクは嫌そうに眉をしかめてついていく。

「ジェリーさん!いつもの『おかえりスペシャル』ください」

食堂に飛び込むなり、尻尾を振る犬のようにジェリーに注文をしたアレンの鼻が甘い匂いを嗅ぎ取った。

(誰かケーキを頼んだのかな?)

キョロキョロとあたりを見渡すと、豪華なケーキを前に鎮座するルベリエと目があった。

するとルベリエは足音高くアレンに近づき…軽く無視して、その後ろに立つリンクの前で立ち止まった。

「君の実力は高く買っているよリンク監査官。これは特別ボーナスだ」

「ありがとうございます、ルベリエ長官」

憧れのルベリエ長官自らサイン入りの『傑作スイーツ撰』を渡されたリンクは、ビシッと背筋を伸ばして礼をのべる。

「アレン・ウォーカー、これから食事をするなら、あのケーキがあるテーブルに座るといい。あぁ。私を気にする必要はない」

それだけを言ってルベリエは食堂から出て行き、ルベリエの偉そうで嫌な感じの後ろ姿に子供っぽく思いきり舌をだしたアレンだったが、ケーキが気になるのでおとなしく指定のテーブルへ座る。
同じくリンクもテーブルへつき、ケーキに書かれた

『誕生日おめでとう、ハワード・リンク』

という文字に目を見開いた。
『今後も職務に励むように』と素っ気ないメモが添えられている。
それをリンクは丁寧に大切な物を扱うように畳んでポケットにしまうと、ケーキをゆっくりと食べた。

「リンク…気持ち悪いですよ、その顔」

「ウォーカー、本当に君は失礼な言い方ばかりしますね」

口調は怒っているようだが、嬉しそうなリンクが少しだけ羨ましいアレンだった。
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