仮想19世紀

□恋は盲目
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お互いの気持ちを打ち明けてから数日がすぎ、マリとミランダの二人になにかあったらしい、と周りが気付きだした頃、神田とリナリーは精神的にかなり消耗していた。
神田は元来その性格から交流のある人物は少なく、マリと師匠であるティエドール、あとはリナリーくらいしかいない。
その神田が最近、マリから逃げまわるようになった。
一方のリナリーもなぜかミランダを避けるようになっている。
理由を聞いても神田は苦虫を噛み潰した顔しかみせず、リナリーも困ったように視線を逸らすだけだ。

「リナリー、どうして最近ミランダさんを避けるんですか?前はあんなにベッタリだったのに」

談話室でリンクのケーキを頬張るアレンにリナリーは疲れたようにため息をついた。

「アレンくん、お願い、聞かないで…」

「神田もマリを避けてるし、マリとミランダさんはやたらとラブ×2なオーラでてるし。もしかして…」

ラブ×2オーラ、という単語に頷き、いままで鬱屈していたものを吐き出した。

「惚気を聞かされるのはいいのよ。でもね…」

一気に話して気が済んだのかリナリーは紅茶を一口飲んで、アレンとリンクの様子をうかがった。

「…リナリー・リー。あなたはよく耐えたと思いますよ」

「あの二人がそんなだなんて…信じられない」

「私でこうなんだから、神田なんてもっと」

「俺がどうしたって?」

いつの間にか談話室に来ていた神田がリナリーの背後に立っていた。
その神田を珍しくアレンが労る。

「神田を初めて可哀相だと思いました。マリを避けるのはやっぱり?」

マリ、という名前に反応してこめかみに青筋がビシリ!と浮かぶ。

「俺の前でアイツの名前を呼ぶんじゃねえ!」

「今日はマリの部屋なんだ…」

「あぁ」

どかっとリナリーの隣に腰をおろし、不機嫌極まりない声で目撃したばかりの光景を話した。

「アイツら、なんで部屋の前でいちゃつくんだ!いちゃつくなら部屋でやれ!しかも離れたら寂しいだとか30近い男の台詞か!?」

「昨日はミランダの部屋の前で《こんなに幸せなことがあるなんて信じられない》って耳まで真っ赤に染めて何回も話してたわ」

思い出して溜め息つき、さらに続けるリナリー。

「廊下であんなに恥ずかしい台詞を言ってるのに、手を繋ぐのも照れる、とか、部屋で二人きりになると意識しちゃって恥ずかしい、とか…そんなの聞かされるこっちの方が恥ずかしいわよっ」

「鍛練の最中でもにやけっぱなしだからな、アイツ」

苛々と話す神田にリナリーも頷く。

「別に二人の仲がいいのはかまわないのよ、ただ目の毒なのよね、廊下で半端にいちゃつかないでほしいわ」

「あの…キスしたり抱き合ってるわけではないんですし…」

「アレンくん…わかってないわね…」

「おいモヤシ!毎晩、照れて真っ赤になりながらガキのままごとみたいなモン繰り返してんのを聞きたいなら、いつだって部屋を変わってやるぞ」

「…遠慮しておきます」

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