仮想19世紀
□秘密の怪獣くん
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最近、赤ん坊の泣き声が聞こえる、という噂がある。
教団内でもっとも高い聴力を有するマリに真偽のほどを確かめたが、マリの答えは「赤ん坊などいない」であった。
「だからさ、赤ん坊の幽霊だと俺は思うんさ」
「赤ん坊の幽霊ねぇ…」
ワクワクと話すラビを胡散臭そうに眺め、アレンはアップルパイを一口食べた。
「赤ん坊の幽霊だなどとエクソシストが何を言っているんですか。…ウォーカー、あなたはアップルパイを一人で食べつくすつもりなんですか?」
皿にあったアップルパイが激減していることに気付いたリンクがアレンに注意するが、毎回大量にケーキを美味しそうに食べる彼の姿はリンクの創作意欲をなぜか刺激する。
「まぁ幽霊はともかく、泣き声ってのは気になりますね。でもマリは赤ん坊はいない、って言ってんるんですよね?」
「そうなんだよな〜。マリの耳に聞こえない赤ん坊の泣き声、気になるさ」
腕を組んで不思議がるラビ。そのラビが仲良く談話室に入ってくるマリとミランダを見つけて呼んだ。
「お〜い、マリ〜ミランダ〜」
ミランダがその声に微笑みを浮かべて答える。
「こんにちはラビくん、アレンくん、ハワードさん」
「アップルパイ食ってかない?」
「ブックマンJr.…私の焼いたアップルパイで得意げに呼ばないでください。ミス・ミランダ、よろしければどうぞ」
「まあ!いつもすみません。マリさん…あのぅ…」
アップルパイの誘惑に負けたミランダがマリを振り仰ぎ訴える。その様子を感じとったマリは微苦笑を浮かべて頷いた。
「邪魔でなければ同席させてもらおうか」
二人分のお茶とアップルパイを用意して、ラビがまた謎の赤ん坊の話題をマリに振る。