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□ちよこれーと
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司令室に、エドとアルがたどり着いたとき、二人の手の中は色とりどりのラッピングを施された箱であふれかえっていた…。

「これはまたすごい量だなアルフォンス」
入ってきた二人に机で書類をさばいていたロイがおかしそうに笑う。
「何言ってんすか。大佐の執務室だってエライことになってるくせに」
悔しそうに声を上げたのはハボックで、それにロイは悔しいからと言って騒ぐなと鼻で笑ってあしらっていた。

「えっと、あの、これはなんなんですか?」
まだこの慣れない現象に何のことかわからないとアルフォンスは近くにいたホークアイにそっと声をかけた。

今までに女の子からプレゼントをもらったことがないわけではないが、こうも一度にたくさんの人からもらったことは経験にない。

「ふふ、二人ともモテモテね」
「モテモテ?」
「これはね、バレンタインと言うらしいのよ。最近東の国から入ってきた文化らしくてね、2月14日は日ごろお世話になっている人や好きな人にチョコレートを贈るんですって」
「へぇー知らなかったです」
「そう、とにかくそのプレゼントの山をどうにかしたいわね」
「はは…」


司令室に置かれている机の上にひとまず二人はチョコレートの山を置いてソファに座った。
「で、最近はどうだね」
「えぇ何事もなく。エドも慣れてきたし、エドがもう少し慣れて人見知りのほうが納まってきたらまた旅に出ようかと思います」
「そうか」
アルとロイが今度について話している隣でエドはついさっきもらったばかりの箱を両手に持ってくるくるとまわしながら興味津々といった様子でそれを眺めている。

「エドはそれに興味があるのかね?」
ロイが優しそうな声でたずねてみる。
しかしだいぶ軍を訪れるようになってこのメンツにも慣れてきたというのに未だにロイにはあまり懐かないエドはばっと箱を机に置いてアルの服をつかんで顔を隠してしまった。
「…私のことは嫌いかね…」
ガクッと頭を落としたロイに後ろからハボックがさっきのお返しだとばかりに笑う。

「エドにもわかるんじゃないですか?大佐が女ったらしでだらしないってことが〜」
「それとこれとどんな関係があるっ!それに私は女ったらしではない!!」

ギャーギャー騒ぎ出したロイとハボックを尻目にお茶を運んできたホークアイがそのままエドと対面する席に腰をおろした。

「エド君はチョコレートが好きなの?」
「あ、どうなんでしょう?僕はあげたことないので。エド、食べてみる?」
アルを見上げたエドに問えばエドはん?と首をかしげて見せた。
「チョコだよエド」
「ちょこ?」
チョコというものに聞き覚えがないのかエドはさっき置いた箱を見て反芻して
「そうだよチョコ。甘くて、口の中で溶けちゃうんだよ」
アルがにっこりとそう言ってやればエドはそのチョコというものを想像したのか小さく目を輝かせる。
「あら、食べたいみたいね」
「そうですね」
そのようすにアルとホークアイはクスッと思わず笑みをこぼした。

ホークアイによってきれいに包装紙をむかれた箱はでんっとエドの前に置かれた。
四角い箱にきれいに並べられた宝石のような小さなチョコレート。
いろいろな形とその飾りにエドは目を奪われる。
じっとその箱をのぞきこんで目をぱちくりさせていた。

「…」
「もらってみなよ」
「きっとおいしいわよ。ここのブランド有名だもの」
「へぇそうなんですか?」
「えぇ、私も以前頂いたけどとてもおいしかったわ」

ホークアイとアルに促されて、エドの手が恐る恐るといった様子で箱に延ばされる。
いろんな形の中から選んだのはミルクチョコにホワイトチョコのラインが数本入ったシンプルなもので、エドはそれをそーっと口に運んだ。
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