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□liveral giver
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生まれた時から傍にいて。ずっとずっと、見つめてきた。
自分の気持ちを示す事に不器用で、でも実はとっても優しくて。しかも、その愛情は何の見返りも求めない。ただ一途に純粋に、相手の為に動く。それは、弟であるボクに対してもだ。
(家族には……いや、ボクだけには、もっと甘えてくれてもいいのに)
誰よりも大切で、大好きな人――家族だからじゃなく、男として愛しいって気持ち。そして相手が兄さんだからこそ、ボクは自分の気持ちの変化に逆らわなかった。
(だって……)
中身だけじゃなくて、あんなに綺麗で可愛い人は他にいない。禁忌だからって遠慮して、他の誰かに取られるなんて冗談じゃないって思ったんだ。
……でも、兄さんにとってボクは、いつまでも『弟』のままで。
だから、ボクは兄さんに頼られる男を目指した――もっとも、その結果が兄さんを悩ませる事になるとは思わなかったけど。

先週、出来なかった買い物の為に、ボク達はまた街に来ていた。
今、ボク達二人はイーストシティで暮らしている。念願が叶い、ボクだけじゃなく兄さんも元の手足を取り戻したけど――リゼンブールの皆は、兄さんが機械鎧だったって知っている。皆が気にしなくても、誰が噂を聞きつけるか解らない。
とは言え、兄さんが国家錬金術師を辞めた(と言うか辞めさせた)今、軍のお膝元であるセントラルにもいられなくて。だから適度に都会で(田舎より周囲に無関心だから)馴染みもある、このイーストシティに来たって訳だ。
「そろそろ冷えてきたから、コートとか見ようよ」
「えー? いーだろ、今あるので……まさかアル、また」
「ボクじゃなくて。兄さん、また袖のところ破っただろ? 錬金術で直しても、他の布が薄くなってまた破けちゃうんだからね」
元の体を取り戻した後、ボクが成長する度に服を買う羽目になった事は相当、兄さんに衝撃を与えたらしい。真顔で尋ねてくる兄さんを宥めていると、ふと周囲から視線を感じた。
……確かに、兄さんの言う通り見られてはいる。ボクの努力は、自分で思った以上に実ったらしい。
でも、言わせて貰えばボクは鎧だった時から散々、見られてきた。視線の種類が違う事くらいは解るけど、ボクからすれば同じ事だ。昔も今も、ボクには兄さんしか見えてないから、関係ないし興味もない。
問題は、周りの視線が兄さんにも向けられてるって事だ。
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