ニッキ集
□あい にーぢゅ
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「アルの手、すきだ」
そう言ったのは、お風呂あがりの兄の髪をタオルで拭いていたときだった。
「そう?どうしたの急に」
兄の長い金の髪は、本当に綺麗だと思う
(わしゃわしゃ ってしたいけど… う―…ううんっそれは勿体ない!大事に扱いたいものね)
「アルの手は俺に合うように出来てると思わないか?」
「へ?」
「アルが俺の髪を拭くだろ。あと、ほっぺに触れてみたり。背中をなでるときもそうだな。そんで手を握るのもそう」
「うん??」
「全部、俺に合ってるんだっ」
「フィットしてる、ってこと?」
「そう。どこを触っても、アルの手は俺に丁度いいんだ」
なんて嬉しいこと言うの。
ケラケラと笑う兄さん。 兄さんのこの空気、好きだなぁ。ちょっとイタズラっこみたいなんだけど でもとっても優しい笑みと目尻。
こういう瞬間も、僕の中に幸せを咲かせるんだね。
「なら 兄さんが僕に合ってるのかもしれない」
「俺が?そうか?」
「うん!兄さんはどこ触ったって僕に合ってるもの。腰も肩も。頭も、 ふふ、そうだね?ほっぺもそうだ。」
言いながら タオルを置いて、兄さんの頬に触れた。両手に兄さんのぷにぷにが気持ちいい。
「僕は兄さんを抱き締めたりキスをしたり、触れるために出来たのかもしれない」
「アルの手は、俺と触れるためにある?」
「うんっ」
「じゃあ俺もアルに応えられるように出来てるのか?」
「そうだねっきっと僕らは昔からこうなんだよ。もう何千年も前から!」
きっとそうに違いない。僕らの愛は通常を越えた何かがある。兄弟だから、では片付けられない何か。いつもお互いを必要としてる僕らは、家族や恋人の域を越えて 魂同士が求め合うようなものがあるんだ。
「始まりはどんなふうだったんだろうね。もう古すぎて記憶しておけないんだろうな… そうやって 少しずつ、時代を生きて、 必要な部分を足していったんだ。兄さんを誰にもとられないように、僕を見て欲しくて」
「俺はずっとアルを見てきたさッ」
「ありがとう。きっと毎回毎回が上手くやって来たんじゃないんだよ。国籍や時代背景が僕たちを引き裂いたかもしれないね。 幸せな時と、悔しい時を何度も繰り返して 今やっと理想の形になったのかも」
「なら今回は大成功だ? 兄弟なのは盲点…か?」
「どこが盲点なの!全て大成功だよっ 24時間無条件で一緒にいられるしっ 他人じゃ知らないような過去も、ちゃんと二人で経験して育ってきた。こんな密着した環境、兄弟じゃなきゃ出来ないよ。だから、大っ成功だよ」
「うん。・・・前回はよっぽどなんかあったんだな?」
「貪欲に願ったんだね?今度は絶対離れないようにって」
二人して笑いあった。
もし この仮説があってるなら、きっと僕らはこれからも繰り返すのだろう。しがみついて、絡み付いて、混ざりあおうとして、再び愛し合う。
正常から外れた魂のサイクル。
神様だってあきれる愛情。
「必然なんだ、兄さんが兄さんでいるのも 僕が僕でいるのも」
「そうか」
じゃあ今回はコレでよろしく、と兄さんが言った。
こちらこそよろしくと笑う。
僕は兄さんのために
兄さんは僕のために
『僕ら』はまだ始まったばかりだから、これからも発見をすることだろう。お互いが生まれた理由を。
「って固い話の前に、 愛してる兄さんっ」
「俺だって//」
ぽそぽそと 愛してるを呟く兄さん。
はは、まだ先はあるからね
じっくり、指導しましょう?