ニッキ集
□アルフォンスの動く城
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遠く頭上には、大きな白い雲が流れ、青々とした空がどこまでも広がる。足元には一面に小さな花咲き、近くにはこの空のような広い湖が二人を迎えた。
アルフォンスはエドワードの手を引いて、散歩を交えながら この光景の中に静かに建つ小さな小屋に案内した。
ちっちゃな家、とエドワードは嬉しそうに声をもらした。
「僕の大事な隠れ家さ」
アルフォンスは言った。続けて、魔法使いの叔父がこの家を残してくるたこと、子供の頃よく一人で過ごしたことを打ち明けた。エドワードならばこの家を好きに使って良いと言う。
ちいさく しかし優しく微笑むとアルフォンスは再び手を引いて、小さな小屋へと歩き出した。
「?」
アルフォンスは振り替えってエドワードを見る。
エドワードが手を放したのだ。
「どうしたの?」
「こわい…小屋へ行ったらアルが何処かへ行っちゃうような気がするんだ」
エドワードは言った。
自分の両手を握って。
「アル、本当のこと言ってくれ。俺っ、アルが怪物だって平気だ…ッ」
エドワードはアルフォンスの目をしっかりと見た。アルフォンスもエドワードを見返す。
「僕はエドたちが安心に暮らせるようにしたいんだよ。ここの花を摘んでさ。花屋さんをあの店で出来ないかな。ネ?エドならうまくやれるよっ」
「そしたらアルは行っちゃうの?」
アルフォンスは目を見張った。
エドワードの表現が変わったからだ。
「俺、アルの力になりたいんだっ。俺女の人みたいにキレイじゃないし、掃除くらいしか出来ないから・・・」
「エド。エドは綺麗だよッ」
アルフォンスは説得するように強く声を発した。
「………。」
「年寄りの良いとこは、無くす物が少ないことだな?」
アルフォンスは眉を寄せた。
微笑むエドワードの身体は、また老人に戻っていた。