駄文
□Ich liebe Sie-第一
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「ケッ 逃げやがった!」
「大声出すな。子供の足だ、街から出られるわけねぇ」
全身を黒のスーツで身を包んだ、ガタイのいい男が 7人、8人。それ以上かもしれないが、月もないこの夜では把握することが出来ない。
「引きずり出すさ。初めて街に入った奴に、出口なんかわからんよ」
街は、 メタルシティーと呼ばれ、首都とは少し離れたひとつの島だった。
名前の通り"鉄の街"と呼ばれ、 鉄が生まれ、鉄が最後に行き着く街。
「いいか、間違っても撃つな。主人からの固い言いつけだ」
「…ハっ、撃っちまえば、はやくつかまんのによ」
――ザザー――
『聞こえてますよ』
「わ"ッ!」
「入りましたか」
『うん、どうも別の電波が邪魔してね―――ハンス、必ず、追い詰めてください?
』
「はッはぃッ!」
『お願いします。』
――ザー――
「はは、恐ろしいなうちのご主人様は」
「はい…、ぁイエっ!」
黒のスーツたちは 各々闇に消えていった。
ひとりの青年を狙って―――
「はぁ…ッはぁ…ッ!」
くそ…!大人、何人も追っかけて来やがって!
「はぁ―…、俺がなにしたってんだ…っ」
――――1週間前、エドワードの父親が消えた。
もちろん、彼は唐突に旅に出る父にとっくには慣れていたが、今回はいくらか様子が違う。
その朝はいつも通りだ。
部屋が妙に静かで、いくつか荷物が足りない気がする。彼は、‘そういえば、行きたいところがある って話していたような’ と思い、彼が旅に出ていったことをいつも通り察した。
それが、今日、見知らぬアジア系のスーツの男たちが三人ほどあらわれた。
リゼンブールに、スーツだと?
スーツの一人が、訳あってこの家の主に用があり探している と話した。あまり発音がきれいではなかった。エドワードが父親の行き先を知るはずもないのでそのことを伝えた。しかし、 ならお嬢ちゃんがおいで、と 言うが早いかスーツは三
人がかりでエドワードを家の外に連れ出した。
エドワードを押さえ込み、玄関前に移動させた車のドアを開け、車に押し込もう
とするその手際の良さは、当然素人のものではなかった。
「冗談じゃねえし、お嬢ちゃんじゃねえ!!」と彼は大きく足を振り上げた。
その足が偶然にもスーツの一人の大事なところにヒットした。
呻き声をあげる一人のスーツに仲間は一瞬の気をとられ、それを彼が見逃すはず
もなく近くにたっていた男に強烈なアッパーカットを食らわした。
倒れる男のサングラスが空を舞い、
地面にカツン と着くころには 車内の男の顔はボコボコた。