救われない物語
□貪欲なる魂の目覚め
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ハァァ…
まさか自分が幻影旅団の団長クロロ=ルシルフルだったなんて……質の悪い冗談にしか思えない。
ちょっとちょっと、これビックリカメラですかぁ!
それとも夢オチ?
って叫びたい。
しかし、この世界で過ごした年月がそれを否定する。
確かにこの世界のオレはクロロ=ルシルフルなのだ。
あー、困ったなぁ…
クロロってクラピカの鎖を心臓に刺されるし、
幻影旅団なんて何人か死んじゃうし、
まぁ、幻影旅団を結成しなきゃいいんだよな。
クルタ族虐殺だってしなければクラピカにストーカーの如く付きまとわれることもない。
よし、フィンクスに食えるだけ食い物貰ってさっさと流星街からでるか。
「なぁ、フィンクス」
「なん、」
会話の途中、突如として鋭い銃声が響いた。
それと共に進行方向から怒声が聞こえる。
…血の匂いがするな。
足音からして大人3人と子供2人ってとこか。
子供を大人が追いかけているらしい。
どうやらこちらに向かって走っているようだ。
「おい、クロロ!どうする?マフィアの連中かもしれねぇ」
「マフィア?なんでこんな辺境にマフィアがいるんだ?」
「あいつらは俺らを捕まえてはどこかへ連れ去るんだ。実際、何人か連れ去ってくのもみたことある」
「誰も抵抗しないのか?」
「…したくても出来ねぇんだ。あいつらは銃持ってるから。それにマフィアが俺たちを連れ去るのは暗黙の了解みたいなもんなんだ」
「暗黙の了解…か。しかし裏を返せば、別に抵抗できるならしていいってわけだ」
「?」
「あ、気にしないでくれ。それよりオレ早く飯食いたいんだ。さっさと行こう」
進行方向からの足音は段々と近づいてくる。
マフィアを相手にするのは面倒くさいし適当にやり過ごすか。
ぼんやりとしていた遠くから走ってくる子供の姿がはっきりしてきたとき、隣でフィンクスが声をあげた。
「ウボォー!ノブナガ!」
…どうやら知り合いらしい。
さっき撃たれたのか頭がボサボサながたいのいい少年は腹から血を流していた。
しかも【ウボォー】と【ノブナガ】って幻影旅団の奴だよな。
ウボォーはクラピカに殺された奴だったはずだ。
「ウボォー!大丈夫か!?」
フィンクスがウボォーの元に駆け寄る。
勿論、後ろには黒いスーツきたオッサン。
フィンクス、お前単細胞なんだな。
フィンクスは既に射程距離範囲にいる。
もしや自殺志願?
冗談は双識兄ちゃんだけにしてくれよ。
「………はぁ」
どうしたものか。
オレとしてはこんな奴ら見捨ててさっさと腹を満たしたいところだが。
フィンクス行っちゃったしなぁ。
住処の場所わからないと食えるモノも食えなくなる。
ん。
面倒くさいが仕方ない。
懐にしまっていた金属片を握って、オレはフィンクスたちとマフィアの間に立ちふさがった。
そういえば、こっちに来て人殺してないな。
マフィアから発する殺気は貧弱でがっかりだが、まぁいい。
「じゃ、零崎開始だ。ヒャハ、精々楽しませろよな」
貪欲なる魂の目覚め
(さぁ、宴をはじめよう)
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