第3部 決戦!ゼルゼバス軍

□第35話 憎しみの裏
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カラサット「・・・。」
どれだけ進んだだろうか?
そろそろ、敵が来てもおかしくはない・・・気を抜かずにいこう。
「待っていたぞ、カラサット。」
カラサット「兄さん・・・。」
ソルネート「遂にこの時が来たな・・・。」
カラサット「ああ・・・。」
ソルネート「それでは早速、始めるとするか。
      まずはこれを受けてみろ!」
ソルネートは鋏を奏で、衝撃波を飛ばす。
しかし、私はその一撃を防ぐ。
ソルネート「ほぉ、防いだか・・・以前は防げなかったのにな、大した成長だ。
      なら、オレも本気を出していいってことだな・・・!」
カラサット「ああ、構わない・・・私もその為に来たのだからな・・・!」
ソルネート「いいぜぇ、ならくらえ・・・これがオレの、シザーショックだ。」
チョキン・・・
カラサット「!!・・・。」
キィン・・・!
ソルネート「さあ防げるかカラサット!」
カラサット「ハァアアア・・・!!」
ガキン!
ソルネート「何とか防いだようだな・・・。」
カラサット「ああ・・・。」
私の中で、懐かしきあの情景が浮かび上がった。
平穏だったあの日々。
その平穏が崩れる前の、最後の兄との修行。
その時の兄が奏でた鋏の音色。
あれから幾年が経ったであろうか?
あの鋏の音色は、今も変わっていなかった。
今も変わらず、美しく響き渡った。
その音色を、今でも私は覚えていた。
あの時の平穏、あの時の日常を、私は・・・必ず・・・。
取り戻してみせる!
ソルネート「次はこれだ・・・シザーブレット!」
チョキン!チョキン!チョキン!・・・
ソルネートは鋏を奏で、弾丸のような衝撃波を撃ち続ける!
私はその衝撃波を防ぎながら、ソルネートに近づいていく。
カラサット「シザーブレード!」
キィン!
ソルネート「ハッ、甘いぜ・・・。」
私は弾き飛ばされる。
カラサット「クッ・・・!」
ソルネート「シザーブレット!」
私に弾丸が向かう・・・!
だが、私はその攻撃を防ぐ。
ソルネート「強くなったな・・・それでこそ、オレの弟だ。
      認めてやるよ、お前の強さをな・・・。」
カラサット「兄さん・・・?私を認めてくれるのか・・・?」
ソルネート「ああ、お前はよくやった・・・。
      ここからが本当の戦いだ。
      オレは、お前がオレに認められるくらい強くなった時、
      その時こそ、お前と決着をつける時だと思った。
      カラサットよ、お前はオレが憎いだろ・・・?殺したいほどにな。
      今ここで決着をつけようぜ、それが本当に最後の戦い・・・。
      オレを殺せ!我が尊き弟、カラサットよ!!
      お前はオレの誇りだ!例えオレが死んだとしても、
永遠に、胸に抱いて逝くことができる!」
カラサット「兄さん・・・。」
ソルネート「さあどうした!来ないのか!?」
カラサット「兄さん、私は・・・確かに兄さんが憎い。
      けれど私はもう、復讐を望むことは無い!
      もう、誰も殺さない・・・。
      50人も殺したんだ、これを越えることはもう無い。」
ソルネート「・・・来ないなら、オレの方から行かせてもらう。」
カラサット「!兄さん・・・!」
ソルネートが私に向かってくる。
私はその攻撃を防ぐ。
キィン!
ソルネート「カラサット・・・言っておくが、オレはお前を殺すつもりだ。
      手加減などするつもりはない。」
カラサット「どうしてだよ兄さん・・・また、あの頃に戻ろう・・・。」
ソルネート「あの頃、だと・・・?今はもうないだろう。
      オレがこの手で、この音色で消し去ったのだからな。」
カラサット「いいや、まだ、取り戻せるはずだ・・・。
      二人だけでも、まだ・・・!
      私は兄さんと同じ罪を犯した。
      私と兄さんは、同じになれたんだ。」
ソルネート「・・・それでも、無理だ。」
カラサット「どうして、どうしてだよ兄さん!」
ソルネート「・・・すまない、カラサット。」
ザク
カラサット「!!?」
ソルネート「死にたくなければ抵抗しろ、これが最後だ。」
私は肩を貫かれた。
血が床に零れ落ちる。
ポタ・・・ポタ・・・
ソルネートは次の攻撃に向け、構えている。
私はソルネートから距離を置いた。
カラサット「分かった・・・だが、兄さんは必ず連れ帰る!」
ソルネート「・・・何故だカラサット、お前の憎しみはその程度だったのか?
      お前はオレを殺したいほど憎んでいたはずだ。
      そしてその憎しみの力で、ここまで強くなったのではないのか?」
カラサット「・・・確かに、私は兄さんを憎んでいた。
      だが、私は気付いたんだ。
      憎しみの裏は、“愛”であるということに。
      兄さん、私は兄さんを愛していた。
      だから確かに私の今の力は、憎しみから生まれたものだ。
      兄さん、私は兄さんが憎い。」
ソルネート「・・・お前・・・オレはお前を辛い目に合わせた。
      そのせいでお前は・・・お前の心は、傷ついてしまったというのに・・・。
      それでもまだ、私を兄として、慕ってくれるのか・・・?」
カラサット「そうだ、いくら憎まれ役になろうとしても・・・。
      それでも、兄さんは兄さんだから。」
ソルネート「カラサット・・・!」
カラサット「お願いだから、戻ってきておくれよ・・・。
      私の大切な、かけがえのない、ただ一人の・・・兄さん。」
ソルネート「オレは・・・戻れるのか・・・?」
カラサット「ああ・・・兄さんが戻ってきてくれれば、あの時の平穏が・・・。
      あの、幸せだった日々が、戻ってくる・・・。」
私は、そっと兄を抱き寄せる・・・。
カラサット「おかえりなさい、兄さん。」
ソルネート「・・・本当に、戻れるのか・・・?」
カラサット「ああ、兄さんが戻ってきてくれること、それだけが私の望みだ・・・。」
ソルネート「そう、か・・・分かった・・・。」
そして、私に平穏が戻った。
その時私は確かに、幸せだと感じていた。
もうずっと手放すことはないと、願った。
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