第1部 ゼルゼバス軍特殊部隊

□第8話 深き水の戦士
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廊下の先の扉を開け、中に入る。
その先にはオレの見覚えのない人物がいた。
????「お前がアースキンか。」
アースキン「ああ、そうだが、お前は誰だ?」
????→deep「これは、紹介が遅れたな。オレの名はdeepだ。」
アースキン「deep・・・、そうか、お前がdeepか。
つまりオレの相手はあのdeepだということか!?」
オレはその名を聞いたことがあった。
オレと同じ水の戦士、deep・・・。
deep「・・・そうだ。オレはお前と戦いたいと思った。
   オレと同じ水の戦士としてな。
   だから、お互い手加減無く、全力で戦いたい、正々堂々と。」
アースキン「いいだろう、どこからでもかかってこい。」
deep「そうだな。だが、ここは水の戦士らしい戦場で戦おう。」
そう言うと、突然部屋が水で沈んでしまった。
アースキン「何?」
deep「安心しろ、呼吸はできる。どちらにしろ水の戦士だから溺れることはないが・・・。
   どうだ、驚いたか?オレは部屋を水で沈めることができる。
   人間が呼吸できる、特殊な水でな。
オレ達はここで戦うことになる、光栄だろ?」
アースキン「ああ、そうだな・・・驚いたよ。」
deep「では始めようか、お互い悔いの無いように・・・!」
アースキン「ああ、行くぞ!!」
deep「いいだろう、かかって来い・・・!!」
アースキン「ダイナブレード!!」
オレの剣から強力な風が生まれ、水を斬りながらdeepに進む!
deep「無駄だ。」
キィィイイイイン!!!
しかし、弾かれてしまう。
deep「次はこっちの番だ、水流斬!!」
ダイナブレードとは違う水流の刃が数発こちらに向かってくる!
アースキン「全て防ぐまでだ!」
キィィン!!キィィン!!キィイン!キィイイン!!
しかし、そこにdeepはいない。
アースキン「しまった!」
キィイイイイン!!!
間一髪で防いだ。deepはオレの後ろにいた。
deep「今の一撃を防ぐとはな。」
キン!!キン!キィイン!!キィン!!
お互いの剣がぶつかり合う。両者1歩も譲らない。
キィィイイイン!!!
2人共1度離れた。
アースキン「うぉおおぉぉおおぉおおお!!!」
deep「はぁぁあぁあぁぁぁああああぁああ!!!」
キィィイイイイン!!!
お互いの剣のぶつかり合いはまだ続いている。
キィイン!!キィイイイン!!キィイン!!
deep「竜巻水流斬!!!」
すると、deepが激しく回転し、巨大な竜巻ができる。
その竜巻が水を斬りながらオレに襲い掛かる・・・!!
アースキン「クッ。」
キンキンキンキィイイン・・・!!!
ガキィィイイイン!!!!
アースキン「ぐぁああぁぁぁああぁあああ!!!」
オレは激しい竜巻の力に負け、思いきり吹っ飛ぶ!
ドゴォォオオオオオ!!!
アースキン「クッ・・・。」
deep「どうした?これで終わりではないだろ?来い。」
アースキン「ウォーターブレイク!!」
水中で使った為、巨大な水流となってdeepに向かう。
deep「ウォーターブレイク!!」
アースキン「何!?」
ドゴォォオオオオン!!!
2つの水流は轟音を立て相殺し、消滅する。
deep「オレ達はお互い水の戦士だ、同じ技を使わないとも限らないだろ?」
アースキン「お互いの力は5分ということか。」
deep「そうだな、試されるのは戦術だ!!」
アースキン「アクアディスターブ!!」
無数の水流がdeepに向かう!
deep「クッ。」
キィイン!!キン!キィイイン!!キイン!!
アースキン「竜巻水流斬!!」
deep「何!?」
ガキィイィィイン!!!
deep「ぐぁああぁぁあぁああああ!!!」
deepは向こうの壁に激突する!
ドゴォォオオオオン!!!
deep「クッ、なかなかやるな。」
アースキン「ああ、お前もな!」
オレは倒れているdeepに向かっていく。
キィィイイン!!
deep「だが、そう簡単にやられるわけにはいかない!」
deepは立ち上がる。
deep「ハッ!」
キィィイイン!!
オレは勢いで後ろに飛んだ。
deep「海波斬!!」
もの凄い勢いの巨大な水流の刃がオレに向かう。
その威力は今までで最も高い!
ギィィイイイン!!!
オレは何とか剣で防御したが、威力が高すぎる。
アースキン「クッ・・・!!」
ドゴォオオオオン!!!
アースキン「ぐぁああぁぁあああ!!!」
防げなかった。
オレは海波斬に弾かれ、吹っ飛んでいく・・・!
剣もオレの手から離れ、水中を漂う。
deepにとって今のオレは無防備の状態・・・チャンスだ。
だが、deepは向かってこない。
オレは体勢を立て直し、deepの方を向く。
アースキン「何故攻撃してこない、お前にとってチャンスだったろ?」
deep「いいから剣を拾え、オレは無防備のお前を攻撃したくない。」
アースキン「・・・分かった。」
オレは水中を漂う剣を拾う。
deep「では続きを始めようか。」
アースキン「ハッ!」
オレはdeepに向かう。
アースキン「(あいつに勝つにはなんとか接近戦に持ち込むしかない!)」
キィイン!!
deep「フッ、接近戦なら勝てると思っているようだな。
   だが・・・、それは大きな間違いだ!!
キィン!
deep「水破爆陣!!」
deepが素早く剣を振り下ろしたのと同時に爆発が起きる!
ドガァァアアアアン!!!
アースキン「ぐぁぁあああぁぁああ!!!」
オレは吹っ飛ぶ・・・!
deep「とどめといこう、渦流牙水斬!!!」
水中を巨大な渦潮がオレに向かってくる・・・!!
アースキン「アクアバリア!!」
ドガァアァアアアアン!!!
バリアは簡単に砕かれたが、いくらか威力は軽減できたらしい。
アースキン「ク・・・、はぁ・・・はぁ・・・。」
deep「もう限界そうだな、終わりか?」
アースキン「まだだ・・・、ここで終わって・・・たまるか・・・。」
deep「そうでなくてはな、では・・・来い!!」
アースキン「トルネードスラッシュ!!!」
オレの剣から巨大な渦潮がdeepに向かう!
deep「水膜盾壁!!」
その瞬間deepの周りに水の膜ができ、オレの渦潮を防ぐ。
オレは素早く後ろに回り込む。
deep「気付いていないとでも思っているのか?」
キィィイン!!
deep「水破爆陣!!」
アースキン「ッ!!!」
オレはとっさにその場から離れる。
ドガァァアアアン!!!
deep「かわしたか、やはり同じ手は効かないらしいな。」
アースキン「アクアエクスプロージョン!!」
オレは勢いよくdeepに剣を振り下ろす!!
ドガァァアアアアン!!!
しかし、deepはいとも簡単にかわした。
アースキン「(何だ、こいつのこの強さは。とてつもなく、強い・・・!!
       本当に勝てるのか?こんなやつに・・・。)」
deep「どうした?怖気付いたか?」
アースキン「そうかもな、どうしてお前はそんなにも強いんだ?」
deep「怖気付いただと?お前はその程度の戦士だったのか?」
アースキン「まだそうだと言ったわけではない!」
deep「なら来い、お前の力を見せてみろ!」
アースキン「ハァ!!」
キィィイン!!
deep「どうした?お前の力はその程度ではないだろ?」
アースキン「オレにはダメージがある・・・。」
deep「ダメージ如きで諦めるほどお前は弱い戦士だったのか?」
アースキン「・・・。」
deep「違うだろ?」
アースキン「(ああ、違う・・・だが、勝てない・・・勝てる気がしない・・・。
いったい、どうすれば・・・どうすればこいつに勝てるんだ!!)」
deep「お前の力なら、オレに勝つことも可能なはずだ。」
アースキン「(無理だ・・・オレの力では・・・。)」
deep「オレはお前を信じている、こんなところで諦めないと・・・。」
アースキン「残念だが、お前の期待に応えることはできない。
      もう限界というものが来ている・・・。
      どうしてお前は今日初めて会ったオレを信じることができるんだ?」
deep「それはオレにも分からない・・・だが、運命というものかな。
   今日ここで出会った相手がオレと同じ水の戦士という運命の為か。」
アースキン「運命・・・か、今日ここでオレとお前が出会ったのも、
      何かの縁なのかも知れないな・・・。」
deep「もしそうだとしたら、今日のこの出会いを忘れないでくれ、必ずだ・・・。」
アースキン「何だ?もう2度と会えなくなるような言い方だな。」
deep「・・・。」
その瞬間、deepは俯いて黙ってしまう。
アースキン「どうした?」
deep「向こうに扉がある、あの扉はオレ達2人のどちらかが死なないと開かない。」
アースキン「何?」
deep「オレはお前に死んで欲しくない、お前を殺したくない・・・。
   お前にあの扉を潜って欲しい、お前に先に進んで欲しい・・・。
   お前に平和を築いて欲しい、お前の仲間にも・・・。
   だから・・・。」
アースキン「・・・。」
deep「この・・・オレを・・・。」
アースキン「それ以上は言わなくていい、言いたいことは分かった・・・。」
deep「・・・そうか・・・。」
アースキン「・・・。」
deep「だから最後に、お前と全力で戦いたいんだ!
   悔いの残らないようにな・・・。」
その瞬間オレはdeepが最初に言っていた言葉の意味を理解した・・・。
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deep「では始めようか、お互い悔いの無いように・・・!」
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アースキン「お前の気持ちは分かった、全力でいこう!!」
deep「ありがとう、アースキン・・・。」
アースキン「(やっと分かったぞ、どうしてこいつがこんなに強いのか・・・。
       ・・・背負っている覚悟の重さだ。
       こいつは死ぬ覚悟でオレと戦っている。
       最期に悔いを残さない為、心から全力で戦っている・・・。
       それならオレにも覚悟はある、こいつを殺さなければいけない覚悟・・・。
       本当はオレもdeepを殺したくない、だが・・・殺さなければならない。
並の覚悟ではそれはできない・・・。)」
deep「さあ、来い!!最期の戦いだ・・・!!」
アースキン「ああ・・・!!」
キィィン!!
アースキン「うぉぉおおぉおぉおおおお!!!」
キィィイィイイイン!!!
勢いでdeepが飛んでいく・・・!
deep「そうだ!それでこそ水の戦士!!オレも本気でいくぞ・・・!!」
アースキン「来い!!受けてやろう、お前の最大の一撃を・・・!!」
deep「海波斬!!!!」
先ほどのよりも更に強力な水流の刃がオレに向かう・・・!
アースキン「ハァァアアアァアアァアア!!!!」
ギィィィイイィイイイン!!!!!
アースキン「うぉぉおおぉおおおぉおおお!!!!
      ハァァアアアァァァァアアア!!!」
キィィィイィィイイン!!!
海波斬は消滅する。
deep「フッ・・・流石だなアースキン、お前ならやると思ったよ。」
アースキン「お前はまだ戦えるだろ?」
deep「オレが全力で放った海波斬をお前が全力で消滅させた・・・。
   もう、お前の勝ちだ。」
アースキン「何言ってんだ、これからだろ?まだやり残したことがあるだろ?」
deep「いや、お前が心からオレの為に全力になってくれて、オレは嬉しいよ。
   オレにはもう思い残すことはない、悔いのない戦いだったよ・・・。」
アースキン「・・・。」
deep「オレには昔から仲間がいなかった、ずっと孤独だったんだ・・・。
   そして孤独から逃れる為にゼルゼバス軍に入った。
   だが結局誰も仲間になってくれなかった・・・。」
オレは黙ってその話を聞いていた。
deep「だが・・・、お前はオレにとって仲間と言っていい存在になってくれた。」
アースキン「deep・・・!!」
deep「お前とは死んでも仲間だ、永遠にな・・・。」
アースキン「deep!オレはお前を殺せない!!」
deep「覚悟はできているんだろ?オレを殺す覚悟・・・。
だからさっき全力でオレと戦ったんだろ?」
アースキン「・・・。」
deep「オレには平和は築けない、仲間もいないこんなオレに・・・。
お前を殺したらオレは1人になってしまう、
そんなことオレには耐えられない・・・。
オレはこの世界が平和になって欲しい、その為には・・・、
お前の為に死ぬしかないんだ!!
お前の為だけじゃない、お前の仲間の為にも、
この世の全ての人の為にも・・・!!
お前なら平和を築けるだろ!?お前には仲間もいる。
だから、オレを殺してくれ!それだけがオレの望みだ・・・!!」
アースキン「deep・・・お前が死んでもお前の心はオレが受け継ぐ。
      だから、安心して逝ってくれ・・・。」
deep「分かった・・・。」
アースキン「・・・。」
deepは静かに目を閉じる・・・。
deep「たとえ死んでもお前のことだけは忘れないよ・・・。
   最期にできたオレにとってたった1人の仲間・・・。
   アースキン、その剣でオレを殺すんだ・・・!!」
アースキン「・・・ああ・・・。」
deep「・・・。」
目の前には目を瞑って死を待ちながら立つdeepがいる・・・。
オレはdeep目掛けて思いきり剣を振り下ろす・・・!!
ズバァァァアアア・・・
deep「がはっ・・・、アースキン・・・ありがとう・・・・・。」
バタッ
deepは静かにその場に倒れた・・・。
もう2度と、動くことはなかった・・・。
アースキン「deep・・・お前だけは、救ってやりたかった・・・。」
deep「・・・・・・・・・。」
オレは最後に1度だけdeepの顔を見た後、その場を後にした・・・。
部屋には安らかに眠っているdeepの姿だけが残った・・・。
その水の戦士は、もう2度と覚めることのない眠りについているのだ。

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