第1部 ゼルゼバス軍特殊部隊

□第10話 兄との因縁
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扉を開けると廊下があり、その先の扉を開ける。

どんな敵が来ても必ず倒す

そう思いながら、私は扉を開けた。
しかし、次の瞬間その考えは一気に消え去ることとなる。
なぜならそこにいたのは、そう・・・‘‘奴’’だったからだ。
カラサット「!!!!・・・貴様は・・・。」
?????「驚いたかい?ッハハ!」
カラサット「ソルネート・・・!!」
?????→ソルネート「実の兄を呼び捨てか、てめぇも随分偉くなったじゃねぇか。」
カラサット「何故、ここにいるんだ!?」
ソルネート「何故かって?てめぇを殺す為だよ、そういう約束だったからな。」
カラサット「・・・!!・・・あの時か・・・。」
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これは私がまだ幼かった頃の話だ。
・・・8年ほど前だろうか?
私は恵まれた家庭で過ごしていた。
そう、兄ソルネートも含めて。
だが、そんな平和な家庭は一瞬にして崩れ去ることとなる。
ゼルゼバス街のある場所に、私は暮らしていた。
当時はゼルゼバス街という名はまだなく、鋏の一族達が暮らしていた。
その時私は兄に呼び出され、鋏術について教わっていた。
兄が直接私に鋏術を教えてくれることは滅多になかった。
その当時私は兄を尊敬していて、兄に認められるのが私の夢だった。
そしてこれはその夢を叶える唯一の機会だった。
私はこれまでないほどに緊張しながら兄からの教えを聞いていた。
ソルネート「カラサット、お前はいずれオレを超える存在になる。」
カラサット「・・・うん。」
ソルネート「この能力が使えるのはオレとお前だけだからな。」
そう言うとソルネートは鋏を取り出した。
そしてその鋏の音を奏でてみた。
チョキン・・・
美しい音色が辺りに響き渡る・・・。
鋏の音をこんなにも美しく奏でられるのはこの時のソルネートくらいだろう。
カラサット「凄い・・・。」
ソルネート「美しいだろ?今のオレが出せる最高の音色だ。
お前もいずれはこのような音が出せるようになる。」
私はその話を黙って聞いていた。
ソルネート「そしてこれに念を加える。
例えば、あの木を切断するとしよう。」
カラサット「・・・。」
チョキン・・・!!
先ほどの美しい音が勢いよく木に向かう。
バァァアン!!
すると、木は一瞬にして切断されてしまった。
ソルネート「まあ、こんなものだ。」
カラサット「凄い・・・、オレにも出来るかな!?」
ソルネート「さあ、どうかな。やってみろ。」
するとソルネートは私に鋏を渡す。
カラサット「・・・・・・・・。」
辺りに沈黙が流れる・・・。
そして・・・。
カラサット「ハッ!!」
チョキン!
しかし、何も起こらない。
ソルネート「やはり、いきなりは無理か。」
カラサット「・・・。」
ソルネート「まあいい、これを毎日練習していればきっとできるだろう。
できたら是非見せてくれ、楽しみにしているからな。」
そしてソルネートは去っていった。
その場に私だけが残される。
だが、私は帰らなかった、帰るわけにはいかなかった。
カラサット「ハッ!!」
チョキン!
カラサット「ハッ!!」
チョキン!
カラサット「くそ、何で出来ないんだ!!」
チョキン!・・・・・・・・
その日は1日中練習していた。
しかし、結局鋏術を覚えることが出来なかった。
それからもずっと練習した。
何日も何日も・・・ずっと・・・。
あれから何日が経っただろうか。
未だに私は鋏術を覚えていない。
一体、いつになったら出来るのだろうか?
早く、兄に認められたい・・・。
カラサット「(一体、どうすれば・・・。)」
その時私はあの時の兄の鋏の美しい音色を思い出した。
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チョキン・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私はその時の美しさをイメージしながら鋏を奏でた。
チョキン・・・
これまで私が発した中で最も美しい音色が生まれた。
カラサット「・・・。」
私は驚きと感動のあまり声が出なかった。
カラサット「・・・やった・・・。」
やっと、その言葉が出た。
カラサット「やったぁあぁぁああぁああぁぁあああ!!!!
あの時の兄さんと同じだ・・・!!」
だが、まだ鋏術が完成したわけではない。
私はこの時の美しい音色を忘れずに日々練習に励んだ。
それは想像以上に過酷で時間を要するものだった。
そしてあの時、私が兄に鋏術を教わった時から数ヶ月が経った。
私は未だに鋏術が習得できずにいた。
普通だったら、途中で諦めてしまっているだろう。
だが、私は違った。
全ては兄に認められる為・・・。
私は日々努力していた。

そして遂にその時が来たのである。

私は目の前の目標だけを考え、ただひたすら努力していた。
チョキン・・・
バン!!
私の鋏から衝撃波が生まれ、前方の木を切断した。
私に鋏術が芽生えた瞬間だった。
兄には及ばないが、鋏から衝撃波が生まれ、木を切断している。
カラサット「・・・やった・・・、遂に・・・。
      やったぁぁあああぁぁあああああ!!!!
私はそのことを心から喜んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ソルネート「できたら是非見せてくれ、楽しみにしているからな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私はすぐにそのことを報告しに、兄の所に向かった。

カラサット「兄さん!!」
ソルネート「何だ?鋏術、完成したのか?」
カラサット「うん!!とにかく、来て!」
ソルネート「ああ、分かった。」

カラサット「いい?見ててよ?」
ソルネート「・・・ああ。」
カラサット「・・・・・・・・。」
辺りに沈黙が流れる・・・。
そして・・・。
チョキン・・・
バン!!
ソルネート「!!・・・。」
私は兄に答えを求めるように振り向く。
ソルネート「フッ・・・。」
しばらくの間沈黙した。
そして、やっと兄が口を開いた。
ソルネート「よくやったな、カラサット。
      それができれば他の鋏術も操れるようになる。
      オレが教えることはもうない。」
その時、兄はそう言葉を発した。
自分の実の兄が最悪の存在になる前の、最後の言葉だった・・・。
そして遂にその時は来てしまった。そう・・・、それは・・・、
私にとって、何よりも辛いこと・・・。
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