第3部 決戦!ゼルゼバス軍

□第34話 消えない喜び
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ナック「・・・そんなことだろうと思ったぜ・・・。
    ゼルゼバス軍に入るやつは、みんなそう言うんだ。
    お前も、間違った道を行ってしまったのか・・・。」
リフェッド「間違っているものなど、この世にない。
      自らの信じる道こそが、正しいのだ。」
パルム「だけど、平和を実現するために宇宙を支配するなんておかしいだろ・・・。」
リフェッド「お前達は、勘違いをしている・・・我々は支配など求めていない。
      これは、統率だ。」
スティーク「逆らう人間は殺すつもりなんだろ?」
リフェッド「そう、だな・・・極力命は奪いたくないのだが。」
ナック「お前も、恨んでいるのか?オレ達の世界を壊した男のことを。」
リフェッド「恨みなどという念は今のオレには無いな。
      あの経験も、今のオレを形作っている要素の一つだからな。」
スティーク「だったらどうして、その道に辿りついた?」
リフェッド「・・・オレは目を背けなかった。
      現実を受け入れ、過去を見つめ、己のなすべきことを考えた。
      その結果が、今だ。
      平和を実現するためには、世界を変えなければいけない。
      オレ達の様に苦しむ人々を救わなければならないんだ。
      救いこそが何より優先されるべきであり、
      そのために犠牲になるのは仕方のないことだ。
      犠牲となった者は、平和を奪った報いを受けただけにすぎない。」
スティーク「だけど平和ってのは、全ての者が救われるものじゃないのか?
      それに実際、罪のないやつが犠牲になってるんだよ。
      お前等を束ねる、ソディエルのせいでな。
      お前等は、騙されているんだよ。」
リフェッド「オレはこの集団に所属しているが、あくまでオレは個として存在している。
      故に他の者達とオレの考えには差異が生じる。
      だからソディエルのしたことはオレも許せない。
      だがソディエルは千年以上もの間深い悲しみと、憎しみを抱いている。
      罪は罪として消えることはないが、平和のためには救済というものが必要だ。
      犠牲を無くすることをいくら望んでも、必ず生まれてしまうものなのだ。」
ナック「オレ達だって同じ考えだ、cruelとラファエルから犠牲無き平和を託されたんだ。
    お前の考えは正しい・・・なのにどうして、違った道を行った?」
リフェッド「平和を知らない世界が存在する以上、平和など来ない。
      だから平和を取り戻さなければならない。
      世界に存在する悲しみを、人々に知ってもらわねばならないのだ。
      そして、再び笑顔でいられる世界を勝ち取る。」
パルム「お前に聞きたい、どうやって世界を変えるつもりなんだ?」
リフェッド「スイカ・ツェッペリンの話によると、全宇宙に向け放送するらしいな。
      そしてこの宇宙を支配したという発表する。
      もちろん我々に宇宙を支配する意思はないが、
      この放送により人々は混乱するだろう。
      そしてその混乱をスイカ・ツェッペリンの方法で静める。
      恐らく反抗してきた者を殺さない程度に始末して晒すのだろう。
      これにより人々は恐怖し、逆らうものはいなくなる。
      そして混乱が静まれば、スイカ・ツェッペリンによる統率が始まる。
      これで世界は平和になるのだ。
      それまで死者が出ないのが理想だ。
      世界は平和なのだから、反抗する者などいなくなる。
      一時的に、混乱を招くだけだ。」
ナック「随分荒っぽい方法で平和を実現させようとするんだな。
    それにどうやって混乱した世界を統率するつもりなんだ。
    平和なんて力でどうにかなるほど単純ではないぞ。」
リフェッド「スイカ・ツェッペリンを何者だと思っている。
      奴の頭脳を持ってすれば、容易なことだ。」
スティーク「スイカ・ツェッペリンじゃ無理だよ、あいつは平和を知らない。
      平和を感じたことのない奴が平和なんか実現できる訳が無い。」
リフェッド「スイカ・ツェッペリン一人ではない、オレを含め多数の協力者がいる。
      仲間がいれば不可能ではないことだ。
      それにオレは平和を感じたことがある。
共に過ごしたお前達なら分かるだろう?」
パルム「お前の集団は仲間と呼べるのか?
deepは仲間などいなかったと言っていたらしいが?
今お前に、リネラス以外に仲間がいるのか?」
リフェッド「オレにはリネラスがいればそれでいい、だからいない、必要ない。
      だがそれでもオレ達は皆同じくゼルゼバス軍だ、繋がりはある。
ナック「ゼルゼバス軍の中でどれだけの奴がスイカ・ツェッペリンを慕っていると思う?
    スイカ・ツェッペリンの考えになんか興味を持たない奴等がほとんどなはずだ。
    実際に宇宙支配が実現したとしてどれだけの奴が裏切ると思う?
    世界の混乱が収束することなどなく、更なる混乱が待っているぞ?」
リフェッド「その事態が起こった時は、裏切り者を排除する。
      これしか手は無いだろう、考えたくはないが。
      平和の方が重要なんだ、平和の前の一時の混乱だと諦めるしかない。」
スティーク「でもやっぱり平和のために犠牲になるなんて、ずっと傷が残るじゃないか。
      それに犠牲が生まれればまた新たな憎しみが生まれ、また繰り返す。
      お前等の方法では、結局平和なんて来ないだろ?」
リフェッド「ゼルゼバス軍に入っている者はほとんどが独り身だ。
      だから恨みなど生まれない。」
スティーク「じゃあゼルゼバス軍に反抗する奴がいたらどうするんだ?
そいつらも殺すのか?最終的には何人殺すことになる?」
リフェッド「さっきも言ったが、殺さない程度に始末して人々に見せつける。
      これにより人々は恐怖し、だれも反抗などしなくなる。」
パルム「それ、支配って言わないか?」
リフェッド「最終的には世界は平和となり、人々から不満は消え去る。
      だから支配ではない、一時的に支配するような形を取るがな。」
スティーク「さっきも言ったが、スイカ・ツェッペリンじゃ平和は実現できない。
      あいつには結局仲間なんていないんだ、だから無理だよ。」
リフェッド「ならオレとリネラスが力になろう。
      スイカ・ツェッペリンと、平和を知るオレ達ならきっと叶うはずだ。
      できればお前達の力も借りたいのだが・・・、
平和のために、協力してくれるか?」
ナック「・・・残念だが、協力はできないな・・・お前は間違っている。
    だが、結構いい線は行っていると思うぞ。
    支配という形さえやめれば、お前の考えは十分正しいだろう。
    支配だけが、平和への道ではない。
    もっと平和について人々に語りかける方法があるはずだ。
    世界を平和にすることに対して反抗する者などいないだろう?」
リフェッド「いないと信じたいが、必ずそういう者はいるのだ、どの世でも。
      だから結果的に支配という形を取らざるを得ないのだ。」
スティーク「悪いことをした奴が悪いと言われるのは今だって同じじゃないか。
      根本的には今と何も変わらないし、それを支配と呼ぶ奴はいない。」
リフェッド「だが、平和のためには救われない者はあってはならない・・・それが理想だ。
      しかし結局、その理想は叶わないのか・・・。」
パルム「たとえ叶わなくとも、その理想を目指すことを忘れることはない。」
リフェッド「だがやはり、支配が無ければ誰の目にも止まらないだろう。
      宇宙を支配するだけのことをしなければ、注目を浴びることなどない。」
スティーク「少しずつ、語りかけていけばいいんだよ。
      すぐには無理でも、必ず平和は訪れる。」
リフェッド「平和は一刻も早く訪れなければならない。
      さもなくば、平和になる前に数多くの者が犠牲となるだろう。
      苦しむ人々に、一刻も早く安息を与えなければならない。」
パルム「でもだからって宇宙を支配すれば、多くの犠牲者が出るだろう?
    最悪戦争に発展するかもしれないぞ。」
リフェッド「それは無いな、我々には全ての力が無力だ。
      そんなことを起こさせはしない。
      我々が命を奪わない限り犠牲など生まれないのだ。」
ナック「でもそれで平和になるのか?悪意など消えることはないと思うが。」
リフェッド「今のオレからは悪意などとうに消えている。
      悪意は必ず消えるものなのだ。」
ナック「全ての人が、お前みたいに強い訳じゃないんだ。
    一度生み出された悪意は中々消えるものじゃない。
    例え支配によって平和になったとしても、また平和は崩れる。
    その度に、支配するのか?リネラスは、どう思う?」
リネラス「え?」
急に話を振られ、驚いているようだ。
リネラス「私は、リフェッドを信じるよ。」
スティーク「君はとても優しい人だった・・・、オレ達の考えをどう思う?
      宇宙を支配することを、望んでいるのか?」
リネラス「私は苦しむ人がいなくなるなら、それでいいと思う。」
リフェッド「今の世には苦しむ人が多すぎる、だから救ってやらなければならない。」
パルム「方法は一つではないはずだ・・・支配から平和は生まれない。」
リフェッド「・・・やはり、オレ達は道を違ってしまったようだな。
      どちらが正しいかを決める方法はひとつ・・・。」
そう言い、リフェッドは剣を抜き取る・・・。
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