男女
□まわるまわるまわる
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視界が真っ暗になったと思ったら、ネウロに抱き締められていた。
人気の無い公園に二人、傍から見たらカップルみたいかも。なんて軽く現実逃避をしていると、夕暮れ時の公園が再び目に映る。
「どういうつもり?」
そう聞いたつもりの声は、途中で途切れた。
ネウロの顔が私に近づいて、それで、それで……
「ぅわ…!!?」
「なんだ、色気のない声だな」
「それは元々…じゃなくて、いきなり何!?」
「キスだが?」
しらっと言われて、私は頭を掻き毟る。
「夕暮れの公園に二人になった男女が交わすと聞いてな」
「また変な知識を…それに、き、キスっていうのは、その、好き同士の二人がするものなんだよ」
「なら問題なかろう」
大アリだって。そう答えようとして動きが止まる。
「なんだ、初めてだったのか?」
「あ、当たり前でしょ」
「今更カマトトぶらなくてもいいぞ。貴様が男好きなのは公然の事実だ」
「それはアンタの誤解。って言うか、好き同士じゃないじゃん私たち…」
「む、我輩は貴様のことが好きだぞ」
「奴隷として、でしょ。そういうことじゃないんだよ」
一瞬でも誤解した自分が情けない。
“好き同士”なんて妄想に過ぎないのに、ネウロの言葉にうっかり騙されそうになる。
「…まあ貴様がそう思っているならそれで良い」
「どういう意味よ」
「ふん、ナメクジには分からんだろうな」
歩き出したネウロを小走りに追いかける。
今の言葉の真意を考えながら。
妄想に過ぎなかった思いが、少し現実に近づいたのかもしれない。
まわるまわるまわる
非現実すぎる想像に、眩暈を起こしそうだ。
FIN