弐
□第四十一節
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屋敷を出た後は不安と戦う道になった。
嫌な想像ばかり湧き上がり、足取りが重くなる。
「大丈夫か」
「はい…」
「葛原さん、辛いようでしたら私に掴まってください」
島田さんの申し出に素直に頷く。
無理をして足手まといになれば全員の命が危ない。
「お二人ならば大丈夫だ…」
「そうですよね」
私の心中を見透かした斎藤さんの言葉。
絶対に無事だと言い聞かせながら足を動かした。
敵の影もなく安全な場所に着いてしばらくすると土方さんと平助君が現れた。
「副長、ご無事で何よりです」
「ああ」
土方さんの返事に隊全体に安堵の空気が広がる。
「平助君も一緒でよかった」
「瑠依も無事でよかった。山南さんを追ってたんだけど…後から来た土方さんと合流してさ」
「そうだったの…」
「でも俺、新選組守るのに役に立っただろ」
明るく言う平助君の無理が分かって、小さく頷くしか出来ない。
「副長、局長の姿が見えませんが…」
「近藤さんは敵に捕まった」
押し殺した土方さんの声が響く。
「だからと言ってすぐに殺されると決まった訳じゃねえ、きっと俺達に出来る事があるはずだ。俺と平助で動くから斎藤たちは先に会津に入れ」
「しかし…」
「ちゃんと俺が土方さん守るから大丈夫だって」
「別に守ってもらう事はねえと思うがな」
「言うくらいいいじゃんか」
二人のやり取りに斎藤さんが拳を作る。
そっと手に触れると、その拳が解かれた。
「一足先に会津にて戦っております」
「ああ、頼む」
土方さんは安心したように表情を緩めた。
「しかし山南さんがここまで思い詰めていたとはな…」
土方さんがそう呟いた。