弐
□第四十六節
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その日は一さんも休みで、四人で土方さんの家の片付けをしていた。
「瑠依には色々世話になりっぱなしで悪いな」
「京で沢山お世話になりましたし、そのお礼だとでも思って下さい」
土方さんにそう返しながら笑う。
家の場所を取り計らってくれたのは佐川様だし、私に出来る形で恩返しをしたい。
「なあなあ土方さん。あっちの一部屋俺に貸してくれよ」
「なんで俺が左之と一緒に住まなきゃなんねえんだ。そもそもお前旅に出るとか言ってただろ」
「いや、帰ってきた時用に」
「それでも嫌だわ」
京にいた頃にはあまり見られなかった二人のやり取りがとても面白い。
あの頃は表立って分からなかったが、きっと二人は馬が合うのだろう。
「左之が帰ってきた時用に場所を借りておいてやろう」
「本当か斎藤?お前意外と面倒見がいい…」
「馬小屋だがな」
喜ぶ左之さんに一さんが冷たく言い放つ。
一さんがこんな冗談を言うのが珍しく思わず笑ってしまった。
「瑠依まで酷いな」
「ふ、ふふっ…ごめんなさい」
「安心しろ瑠依、俺は本気だ」
「お前!昨日ちょっと瑠依に酌して貰ったからってなあ」
「その後調子に乗って瑠依に好きだなんだと言った罰だ」
はたき掛けをしなげら一さんは言う。
どうやら旦那様は意外と嫉妬深いらしい。
そんな二人を微笑ましく見ていると土方さんに声を掛けられた。