弐
□第四十七節
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梅雨に入って雨の続くなか今朝は随分と冷え込んだ。
会津も涼しい場所ではあったが、そこより北の斗南の地は夏が来るのが遅い。
「おはよう瑠依」
「おはようございます一さん」
廊下で外を眺める私の隣に立つ一さんと挨拶を交わす。
空を見ると今日も重い雲が垂れていて太陽は拝めそうにない。
「今朝は寒いな」
「そうですね…くしゅん」
話しながら思わずくしゃみが出てしまった。
やはり窓際でしばらく外を見ていたせいだろう。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。一さんは心配性なんだから」
「瑠依の事となるとな」
その言葉はきっと今までの私の行動のせいも大きいだろう。
苦笑で言葉を濁して朝餉の準備へと向かう。
「ゆっくりしていて平気ですのに」
「屯所にいた頃のくせで何もせず待っているのは居心地が悪い…」
そう言って一さんは隣で味噌汁の味見をしている。
何回か言ってはいるが毎回こう返され申し訳ないと思う反面、こうして隣に一緒にいる時間があるのを嬉しく思う。
「やはり瑠依の味には敵わないな」
「あら、一さんのお味噌汁も美味しいですよ」
「そうか?まあ、俺が瑠依の作る味噌汁が昔から好きなのもあるのだろう」
そう言って一さんは準備をして膳を持っていってしまう。
器用に二つ持つその背を慌てて追いかけた。