弐
□第四十八節
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「てめぇ、いつまで寝てる気だ!」
もうすぐ時計が九時を指そうとしているのに、未だ起きてこない風間の部屋の襖を開ける。
そこには布団にくるまる奴の姿。
「うるさいぞ土方…昨日帰りが遅かったから疲れているんだ」
「俺だってお前と一緒に帰ってきたわ」
容保公の命でこいつと護衛の仕事から帰ってきたのが昨日の夜中。
疲れているのはお互い様だ。
「さっさと飯食え」
「ほう、俺の為にきちんと作ったのか。褒めてやろう」
「ついでだ。食わないなら片付けるぞ」
「………行く」
起き上がって風間は居間に向かう。
その後ろ姿を見ながら何度目か分からないため息を吐く。
『初めての地なら知った者同士一緒のほうがなにかと協力できるだろう』
容保公のその言葉で本当に風間と同居するはめになった。
その話に瑠依が喜んでいるのを見たら、お互い拒否する訳にもいかず何とか生活をしている。
「土方、貴様意外と料理が上手いな」
「屯所では炊事は当番制だったからな。元々出来はしたが嫌でも上手くなる」
もっとも仕事が忙し過ぎてほとんどやっていなかったし、たまに出来る機会も瑠依がほとんど作ってしまっていたが。
「当番制とはな。料理人を雇えばよかったものを」
「そんな金はねえし、そいつが間者だったら全員簡単に暗殺されるだろうが」
「それはそうだな」
間者の問題はこいつにもあったのだろう。
今までを見てきて鬼という存在も一枚岩ではないみたいだった。