□第四十九節
1ページ/6ページ

「んっ…」


ここ最近長く続く体の不調に、少しだけ顔をしかめる。
昔あったような熱の続く日々のようの感覚だ。


「瑠依大丈夫か?あまり顔色が良くない」

「少し熱っぽいようで…」

「最近食欲もないだろう。一度医者にかかったほうがいいのではないか」


とても心配そうに一さんが言う。
あの頃と違って毎日満たされているから、あまり心労からくるものとは考えたくはない。


「そうですね。近いうちに行って参ります」

「ああ」


安心した笑顔を浮かべる一さんを見ると私も少し安心する。


「そうなると暫くは無理をさせられないな」

「普段の事は辛くはありませんよ?」

「いや、夜の事のほうだ」


少し妖艶な瞳を見せながら言われて言葉を失う。
こう素直に言うようになったのは良い事なのだろうか。


「もう…本当に禁欲させますよ?」

「それは…やはり困る」

「冗談ですよ。そんな真剣に悲しまないで下さい」


しょげた顔をする一さんを見て可愛いと思うのだから、私も大概性格が悪いらしい。
でも自分の感情に素直な一さんが可愛いのだから仕方ない。


「とりあえずきちんと医者にかかって安心させて欲しい」

「はい。一さんとの夜がかかってますもんね」

「ああ」


そんな下らないやり取りにも笑みが止まらないのだから、昔とは違うと嫌な考えを振り払った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ